常々思っていたことではあります。
『胆嚢が悪いですね』
そういわれて薬を処方されて、定期的に血液検査・エコー検査をして
治療の経過をみていく。
それはとても正しいことです。
しかし経過をみていって良くなっていればいいんですが
胆嚢炎は内科治療にほとんど反応しません。
しかも投薬で良化したとしても薬をやめると再発しますので
生涯投薬が必要となります。
とは言え薬でいつまでも抑えれらるものでもないので
投薬の効果があったとしてもいつかは悪化します。
これはまだ効果があったからよしとしても
投薬効果がないことがほとんどなので
そういう場合「いつまで投薬治療をするのか」と言うことです。
飼主さんは
「治療しているんだからきっと良くなる」
そう思っているでしょう。
治療する側はその期待に応えられるんでしょうか。
そもそも胆嚢炎は内科治療で対処できるものではない
私はそう思っています。
つまりいつかは手術して摘出することになると思います。
後はそのタイミングを見誤らないことが重要なんです。
かつては私も内科治療をしていたことがありましたが
今ではほぼやっていません。
ほぼ、と言うのは食事指導だけはしてますので。
投薬治療はやっていない、ということです。
それ以前でも投薬治療の効果判定には
3ヶ月と言う区切りを持っていました。
投薬開始から3ヵ月後にエコー検査を行い
効果があったかどうか確認するわけです。
効果がない場合にはたいてい初診時よりも悪化しています。
効果がない治療を治療とは言わないわけですから
それ以上投薬を続けることをよしとせず
投薬終了と宣言します。
最近では胆嚢手術の依頼が他県の方からもありまして
年々増えてきています。
中には投薬治療を年単位で行っていた、ということもありまして
そういう長期にわたっている場合手術をすると
癒着が酷くなっているだけで手術侵襲が強くなってしまいます。
先日手術した例では飼主さんに確認したところでは
少なくとも3年以上投薬をしていたらしいですが
エコーを見てみると胆嚢内部は小胆石だらけで
治療効果があったとは言えません。
いざ手術してみると胆嚢と肝臓との癒着は非常に重度で
剥離にものすごい手間と時間がかかりました。
それだけならまだしも、胆嚢と十二指腸が癒着していまして
こういう事例は初めて経験しましたが
もしも気づかずにその癒着剥離を誤ったら
十二指腸を分断するところでした。
また十二指腸が胆嚢と癒着していると言うことは
過去に胆嚢が破裂して出血したと言うことです。
幸い大きな破裂ではなかったんでしょうが
そのために十二指腸が癒着したわけですから
食べ物が胃からまともに出て行かなくなってしまいます。
それが証拠にこの犬は食べる量が少なくなり
しかもしばしば嘔吐があったわけです。
効果のない投薬治療を延々と続けても
胆嚢炎の悪化は止められませんし
また周囲組織を巻き込んでしまいいざ手術するとなると
相当煩雑な手技が必要となります。
もちろん手術を受ける動物の体にかかる負担も大きくなってしまい
回復するのに時間がかかります。
効果がないと見た場合には
すぐに次の手、手術と言うカードを切らないと
大変なことになりかねません。
その見極めが出来てこそ
本当の治療だと思うんですが。
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