岡本動物病院

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院長のブログ

症状があってこその病気です

院長 / つぶやき / 2020.2.17 20:59

検査の数値だけでは何とも言えませんねぇ

色々な方から相談のメールが届きます。
私のわかる範囲内で返答しています。

そういう相談を受けていると時々「あれ?」と思うのが
検査数値だけで診断されている事例が多いな、ということ。

例えば健康診断の際の血液検査データから
あ〜だこ〜だと説明を受けて
投薬治療が始まったものの
なんだかだんだん調子が悪くなる、と言うパターンが多いんですね。

例えば例えば
「甲状腺ホルモンの数値が正常値より低い」から投薬治療をはじめます、と言う場合
ホルモン性疾患の場合、「本当に病気」ならば治療が必要ですけど
甲状腺機能低下症の場合、ほとんどの事例で無症状、無兆候と言うことはありません。
多くの場合「皮膚に異常がある」はずなんですね。

教科書的には・・・
左右対称性の痒みを伴わない皮膚症状
脱毛
皮膚の色素沈着
と書いてあります。
または
低体温気味
活動性の低下
食欲はある
下痢嘔吐などは見られない
皮膚の弛み
なんとなく情けない表情になる
などなど書いてあります。
血液一般検査では
軽度な貧血
高脂血症(高コレステロール血症)

これらの臨床症状が全くない、と言う状態で
甲状腺ホルモンを「たままた」測定したところ
正常値よりもちょっと低い値が出た、と言う時
これを病気と捉えるかどうかでその犬の運命が変わってきます。

かつて甲状腺機能低下症と言えば
Gレトリバーと言われていました。
これは遺伝的に甲状腺が壊れてしまう
免疫性疾患が多いからと言う事でした。
多分それは今でもあることだと思いますが
以前よりも飼育頭数が減っている現状ですので
Gレトリバーだけの甲状腺機能低下症ばかりではなくなっています。
若齢で甲状腺ホルモン低下症と言うと
少なくとも当院ではここ最近では
柴犬で、特に黒柴で多い感じです。
もちろん投薬治療となると検査をして確定診断してからにしますが
特に皮膚の症状からアプローチしていることがほとんどです。

また高齢になるとホルモン分泌量は少なくなります。
これは当たり前のことで、これを「老化」というわけです、が
往々にして体はバランスを取っていますので
少々ホルモン量が少なくても症状がない、と言うことは普通に見られます。
時に老化のレベルを超えて思い切り分泌量が減ってくることがありますが
これは立派な病気です。
なぜか?と言うと必ず症状がついてきますので。

生理的な範囲での測定値低下を病気として
投薬、つまり甲状腺ホルモン剤を投与すると言うことは
往々にして薬による有害事象が起こってきます。
つまり、不必要な投薬によって
甲状腺ホルモンの過剰症と同じ症状がでてしまうかもしれません。
ホルモン過剰症は怖いですよ。
ホルモンは体中に作用していますので
有害事象が身体全体に出るということになりますから。

これはホルモン性疾患に限ったことではなく
最近参加した皮膚病のセミナーの時でしたが
抗生物質の過剰投与、乱用によって
薬剤耐性菌が出現します、と。
これはそもそもは人の医療の方で問題視されていたことですが
近年は獣医の方が乱用しているんじゃないの、と言うことで
無暗な使用は現に慎むようにという流れに
世界中巻き込んでなっているようです。

無用な薬剤使用によって病気ではなかったのに病気になっちゃった
なんてことはあってはならないですし
薬の効かない怪獣を作ってもいけませんね。

ホントに病気なの?
薬が必要なの?
その使い方で正しいの?
こんなことは白衣を着ている人間としては
当然注意しておかねばならないことです。

症状があり、病気を疑い、それがどこの臓器で
どんな風になっていて、どの程度の悪さなのかと言うことを
確認するために行うのが「検査」であって
なんだかよくわかんないけど検査してみよう、と言うのは全然違います。

その検査が「検査のための検査」では
全く意味がないことになってしまいますから。

それと・・・
血液検査は数値で表されますが
単純に「正常値じゃないから異常」というのも乱暴な話です。
正常値と言うのは統計的なものであって絶対不変のものではないです。
例えばクッシング症候群の場合に行うACTH刺激試験と言うのがありますが
試薬を投与した後の数値がば〜んとはねあがってくると
クッシングだ、と診断できるんですが
厳密言えばACTHテストだけじゃダメ、と言う専門家は多いです。
でも臨床医としては、臨床症状があって、エコーで副腎を確認して
クッシングを疑って、ACTHテストをしたらビンゴだったと言うことになるんです。
でもその数値が正常値の上限を超えたと言うだけではなかなか微妙なところで
実はこの場合「グレーゾーン」が存在します。
グレーゾーンは「正常値をほんのちょっと超えた」数値の場合で
こういう事もよくあります。

こういう時はどうするか?と言うと
すぐに投薬をするのではなく、しばらく間をおいて
その間の臨床症状・兆候を確認して
それでもやはりクッシングっぽいとなれば
再検査をする、と言う流れになります。
それで再検査をしたら正常範囲内だったと言うこともよくあることです。

昔習いましたが

「数値は見るんじゃない。読むんだ」

今もこのことは常に頭にあります。

| comments (3) |

コメント

岡本先生
ご多忙な中ご心配いただき、ありがとうございます。まだまだ心配な状況ですが、膵炎にもかかわらず、病院食も食べ、吐きもせず、下痢もないようです。早く家に帰ってノビノビできることを願うばかりです。
遠方ですが、いつか岡本動物病院を受診することがあるやもしれません。その時にはよろしくお願い致します。

獅子 / 2020.2.19 01:45

| EMAIL | URL | IUVKSoFQ |

獅子さん こんばんは。

実はお話伺っております。なかなか大変でしたね。食欲回復があれば退院できるはずですからそこから体を出来るだけ元に戻していけばいいかと思います。
早くうちに帰れるといいですね。

岡本宏之 / 2020.2.18 22:56

| EMAIL | URL | iBAzvxqo |

甲状腺ホルモン剤をどんどん増量して治療したためにだと思うのですが、愛犬が急性膵炎になり、糖尿、腎・肝の数値もめちゃくちゃで、クッシングの疑いもあり、体重は激減という、大変な状態になってしまい、緊急入院しています。
クッシングの治療薬も今、既に点滴に使われており、とても心配ですが、今無理に退院させても他に受け入れてくれる病院がなく、なんとか退院できるまで回復してほしいと願うばかりです。

獅子 / 2020.2.18 00:29

| EMAIL | URL | IUVKSoFQ |

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