院長 / つぶやき / 2020.8.11 09:48

だからこそ治療が必要な状態が多くなるんですけどね。

高齢の猫が「ご飯を食べられなくなった」と言う場合、まずは次の3つを考えよ
と以前受講したセミナーでイギリスの助成獣医師が講演の中で話していました。

1：慢性腎臓病
2：歯周病
3：関節炎

特に2・3は「痛み」を伴うものです。
食べられない原因がこの痛みによるものだとするならば
その痛みを取り除いてやろうと考えるのは普通のことだと思います。
ほとんどの人は痛いの嫌だし嫌いでしょ？
私も嫌ですし嫌いですよ。

年を取って体力が落ちたところで
痛い・苦しい・しんどい
と言う状況に何ら手を差し伸べないということは
私の中にはありません。

逆に・・・
臨床獣医師として、高齢になってから多くなってくる
病気に対する対処法を身につけてきたわけですから

「高齢を理由に治療を断る」

こういう選択はありません。


他院からの転院事例で一番多いのは歯周病です。
年齢を理由に断られた、と言うことです。

そもそも歯周病自体が年齢を重ねることで多くなってくるものですので
高齢犬・猫での歯周病はいわば「当たり前」のことです。

獣医側の理由はおそらく麻酔のことなんだと思いますが
単に年齢を理由に断ると言うことは単に技術のなさだと思います。

飼主さん側の理由としては色々あるんでしょうが
金銭的なことはさておき
経験が無いがゆえの怖さってのもあるんじゃないでしょうか。

子犬の頃からずっと当院に掛かっている患者さんでは
麻酔や手術に対するハードルがものすごく低いです。

『最近口が臭いのよ』
「あぁ〜　歯周病が出てきてますね」

こういう会話があると大抵すぐに予定を組んで処置をします。
多い人だと歯周病の処置だけでこれまでに3〜4回実施と言うのもあります。
そのつど元気に家に帰り、口の臭いがさっぱり消えて、ご飯もバクバク食べるという
経験があるからでしょうね。


先日は20歳の犬の歯周病治療をしました。
こちらの方は県外からこられる方で
犬も15歳から診察しています。
これまでに3回手術をしています。
今回が4回目と言うことなんですが
歯は7本抜歯してついでにポリープがあったのでこれも切除しました。
今までは麻酔の覚醒も良好でしたが
さすがに20歳だと無理だろうなと思ってましたけど
事情があり処置の当日退院・帰宅となりました。
夕方飼主さんが迎えに来た時には足に力が入らずふらふらしてましたが
ご自宅へ帰ってから電話があり「しゃきしゃき歩くようになったんでこれから散歩に行ってきます」とのこと。

ちなみにこの犬が特別なんじゃないですよ。
持病として老齢性心臓病と慢性肝炎がありますので。

こちらがそれを踏まえたうえで麻酔をしていますから
ダメージが最小限にすむようにコントロールしています。
これが「技術」なんです。

高齢だから麻酔は・手術は嫌だと言う場合
私は強制はしません。
また高齢だから検査・治療は嫌だと言う場合
じゃあ、私は何をすればいいの？と聞きます。

高齢だからという理由で治療が出来ないという
獣医師ではありたくないと思ってこれまで歩いてきましたから。
ただそれぞれのニーズには応えようと思いますから
どこまでを要求するか、正確に伝えてもらえば
そのようにします。

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