終生飼育について考えて見ましょう。
ここで法律論を出すのもどうかと思いますが、動物愛護法という法律がある事を忘れてはいけません。
この条文にも終生飼育について明記されていますが、この終生飼育の定義が重要だと思います。
「命あるものは最後(死を迎える)まで飼育すること」
こうなっていますが、ここで1つ考えなければならないのが病気と怪我についてです。
動物も人間同様、年を取れば取るほど病気になるリスクが高くなります。また運動機能の低下などから些細なことで怪我をすることも多くなるでしょう。
その際にちゃんと治療をするかどうかということですが、実際「高齢だから」とか「お金が掛かるから」という事で治療をしない人がいます。
ここで再度法律論ですが、ココには「適切な環境で」と書かれています。
これが何を表しているかというと、よく言えば曖昧、ぶっちゃければ雑な表現だと思いますが、法律条文というのは得てしてこういうものでしょう。
人によっては「病気になったら治療するのは当たり前」と思うでしょうし、別の人は「それはそうだけどお金が掛かるのも事実だし」ということもあるでしょう。
先日映画を見に行ったんですが、そこのモールにはペットショップがありまして、そこをぼ〜っと見てましたら、犬の値段が書かれてて、安いもので15万円高いもので55万円とありました。
個人的には動物を「買う」という概念がないのでへぇ〜高いもんだねと思ってみてました。
興味のない人間にとってはその価格は無価値なわけで「高い」と思うでしょうが、そうではない場合には「それぐらいするよ」と思うこともあるんでしょう。
これは我々の仕事でも同じことです。
先日かなり難しい手術症例があり、私では手に負えなかったので専門医を紹介してそこで手術をしてもらいました。
飼主さんから聞いたところでは「手術だけの費用が35万円」ということでした。
これを高いと思うか安いと思うか、はたまた普通と思うか、ということですが・・・
私は同じ獣医師としてこの手術に掛かる費用は「安い」と思います。
まず手術に掛かった時間が約3時間と聞いています。
また手術に使用した器具は特殊なものでこれ自体がかなり高価です。
そして手術の術式、これは私では出来ないレベルのものです。
それをトータルで考えれば「安い」となり、つまりこの手術はするべき価値があると思います。
もしもこの手術をしなければこの症例は「治らない」という事ですから一生それを引きずって生きていかねばならないわけです。
「痛い」「苦しい」を一生引きずって生きていくことを由とは、私は思いません。
ようはそれに掛かる費用を価値があると考えるのか、無駄な出費と考えるのかということかな、と思います。
とは言え全ての事例で高額(と言われる)な費用をかけてでも治療を受けなさいと言うことではありません。
私は専門医ではないので「最上級の治療法」のみを考えているわけではなく、普通の町医者ですから「手の届く範囲」を常に考えています。
例えばこの症状については詳しく調べないと確定診断が出来ないという場合、過去に同じような症例の治療をしたことがあれば、憶測で仮診断をつけることは可能です。ただ見たこともなければ触ったこともないという場合には憶測そのものが成り立ちません。
滅多に見ないような疾患でも過去に経験があれば治療は出来ますが、それが上手くいく可能性はやや下がるかもしれません、と言うことを先に飼主さんに伝えます。
先日「慢性かつ持続的な下痢と嘔吐が続く」と言う症例がありました。
院内で出来る検査をしてそのつど治療薬を処方してきましたが、どうもパッとしません。
症状が改善しないと言うことで飼主さんも不安・不満が高まってきますが、こうなると詳しい検査をしない限り治療方針が立ちませんが、その検査は当院では実施できないので高度医療を行うところで検査をしてもらうと言う方法を飼主さんへ提案しました。
しかし「それは無理」と言う事でしたので(新型コロナウイルス感染症の影響で飼主さん自身も影響を受けておられるのは知ってましたから)ではこっちで頭を使ってみて新たな方法でやってみようかとなりました。
これまでの経過と検査結果から除外診断を済ませていますのでこれまで使っていない薬を使ってみることにしましたが、一応2通りは準備しました。
まずは第一の方法で、ダメなら第二の方法で、ということでしたが、幸い第一の方法で反応がありました。
お金をバシバシかければ色んな検査が出来ます。
それは人間も同じですね。
人間ならばいくら掛かってもいいけど動物は同じじゃない、と言う人もいます。
それは間違いじゃないと思います、が
我々獣医師は人間の命が大事なのと同じく動物の命も大事だ、と考えている生き物です。
それゆえ目の前でそれを言われると正直ムッと来ます。
思うのは勝手ですが口には出すな、と言いたいところです。
開業医ですから言わんとすることはわかります。
出来るだけ費用を抑えたいのもわかります。
でも治療をしないと治らないのも事実です。
終生飼育はたんに命尽きるまでではないと思っています。
出来ること、出来る範囲は人それぞれでしょうが、後々後悔がないようにそして命の旅立ちを穏やかな心で見送ることが出来るようにして欲しいと思います。
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