院長 / つぶやき / 2020.12.24 18:17

先日受け取った機関紙にも
手術はリスクが高い、と書いてますけどねぇ・・・

犬の胆嚢摘出手術の死亡リスクが高いと言うことを
あっちこっちで目に耳にしますが、実際に手術をしている人間からすれば

そう？

としか思えないですね。

先日読んだ書類では
「胆嚢粘液嚢腫」での抗炎症薬を使った経験事例が
書かれてましたが、いずれの症例も手術適応だと思いつつ
読んでました。
3例の治療経過・結果が書かれており
2例は症状が改善したらしいですが
1例は死亡したとのこと。

1例の死亡は胆嚢破裂だったらしいんですが
それでも手術をしないと言う理由はなんなんだ？と思いますが。

内臓破裂ですから薬でチマチマ治療している場合じゃないでしょう。
緊急手術！となるのが本来のはず。

これが

「自分の体で起こってることならどうすんの？」

って考えれば手術をしない病院にそのまま
体を預けますか？ってことです。

また胆嚢炎の治療基準が明確ではない、とも書かれてまして
それはその通りです。
学会とやらが明確な基準を出してないからなんですが
いつも思うのは例えば胆嚢粘液嚢腫の場合の
臨床症状を意識しているんだろうか？と言うことです。

下痢や嘔吐、食欲廃絶などの症状をもってこれが臨床症状と言ってるわけですが
粘液嚢腫は私が見る限り「腹部痛」があります。
痛いんです。
痛がってるんです。
でも食事はとるんです。
食べてるから大丈夫って思っちゃダメなんです。

以前講演をした際に、この痛みを見逃さないでと話しました。
また早期だから、初期病変だからといって
お茶を濁すことはしないで、とも言いました。

イメージとして捕らえるなら
「癌」の治療はどうしてますか？と考えてくださいとも。

初期の癌には何ら症状はありません。
進行して、転移してからようやく症状が色々出てきます。
とは言えその間の体の不調は自覚するはずなんです。

なんか変だな。でも大丈夫かな、というのが自覚症状だとすれば
動物にもありますよ、自覚症状は。

それを捕らえないとなると進行してから出ないと対応できない、しないという事になりますね。

実際手術の死亡リスクはどうなのか？ということについて
人の場合、手術の死亡率は0.3％らしいです。
そのうち80歳以上の高齢者だと10％と言うことらしいです。

犬の場合はと言うと、書籍や論文から見ると
死亡率は10〜20％となっているのが多いです。
この数字が事実なら確かに手術リスクは高いと言わざるを得ないでしょうね。

問題なのは手術のタイミングじゃなかろうかと思ってます。
いよいよ悪くなってから手術すればそりゃ危険です。

当院では粘液嚢腫あるいは胆石を見た場合には
治療は手術一択としてます。
なぜなら内科治療ではこれらは絶対に治らないからです。

投薬で粘液嚢腫が消失するなら
あるいは胆石が溶けてなくなるならいいですけど
そんなことは絶対にありません。
そしていずれの病気も「痛み」が必ずあります。
だから手術して原因を取り除く必要があると考えます。

当院の手術死亡率は10％なんてことはありません。
もちろん0％でもありません。
他疾患併発時や胆嚢破裂の場合はリスクは高くなりますが
これまでのデータからは死亡率（手術後いかなる理由であっても死亡したものを含む）は

3％です。

これには帰宅後事故で亡くなったものも含めています。

今年行った34例のうち死亡したのは1例います。
これは実は心筋症があり手術前の検査では引っかからなかった
「隠れ心筋症」というものでした。
それで計算すると死亡率はやはり3％となります。

手術ですからいつもいい状態で出来るわけじゃありません。
今年も胆嚢破裂の症例もありました。
助ける、治す方法として手術を選択するわけですが
リスクばかり持ち上げるのはどうなのかな？と思いますけどね。

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