院長 / つぶやき / 2022.1.13 22:56

と言うほどの事じゃありませんけどね。

当院では年間約140件前後の手術をしていますが
ここ最近、10年ぐらいになりますか
避妊・去勢手術の件数は少ないです。
特にここ数年では「珍しい」とも思えるようになりました。

ちなみに昨年は25件前後だったと思います。
と言う事は1か月で2件程度と言う事なんですが
今月はすでに2件実施しあと2件予定が入っています。
いずれも猫なんですけど、中には普段は他院を受診しているけれど
手術だけの依頼と言うパターンがありまして
なんでかね？と思っていると、どうやら手術自体をしていない病院が増えているようですね。

まあ、手術にはリスクがつきまといます。
若い犬猫だからと言っても先天的な問題を持っている場合もありますし
術前に血液検査やレントゲン検査を行ったところで
その問題をすべて見つけられると言うわけでもありませんし。

麻酔の問題は技術でクリアできますが
例えば心臓の問題があるとなかなか難しいです。
老齢性心臓病の場合は長い時間かけてゆっくりと進行していくので
体の順化がありますから、案外大丈夫なんですが
心臓の筋肉の病気、特に猫の特発性肥大型心筋症は怖いです。
ある時急に発症しますから。
何の前触れもない、と言うところが怖いんです。

そういうリスクを回避するには「手術はしない」という選択になるんだろうな
となんとなく想像はつきます。
もしかしたら過去に手術トラブルがあったのかもしれません。
かくいう当院でも手術後のトラブルは何度もありました。
そのつど原因について調べて特定します。
それは今後のためにと言う事なんですが
時には解剖をお願いすることもあります。
飼い主さんにしてみれば解剖と言うのはなかなか受け入れがたい事だと
重々承知をしていますが、それでも原因を明確にしておかないと
お互いしこりが残ることも怖いですから敢えてお願いをします。

そういう経験があってこその今だと思います。
逃げるのは簡単なんですけど、こういう仕事をすると腹を括ってますので
良いも悪いもすべて受け止めることにしています。
とは言え私はこう見えて案外硝子のハートなので
くじけそうになることもたくさんありました。
一回だけホントにくじけたこともあります。
誰にも、家族にもスタッフにも友人にも相談もしませんでしたけど。
後で振り返ってみるとあれがうつ状態だったんだろうなと思います。

今でも手術した夜は安眠できないですね。
完璧、と思っていてもやはり心配ですから。

でも引けないんですよ。
そんなことするために獣医師を目指したわけでもないし
今のスタイルを築いてきたわけでもないですから。
人から褒められたいわけでもないんです。
強いて言えば、両親が私がこうしたああしたというのを
話をすると喜んでましたからその期待を裏切りたくはないんです。
もう二人ともいませんけど。

もちろん出来ない手術を引き受けると言う事はありません。
出来ないことは出来ない、とはっきりさせておかねばと思ってますが
出来ない事は恥ずかしいとは思ってないですから。
ただ出来る手術は例数を重ねることで精度を高めることが可能です。
やればやるほど上手になるはずです。
なかにはその逆を行く人もいますけど。不思議です。

若いころから比べると色んな手術のバリエーションは増えましたが
子宮卵巣全摘出手術、睾丸摘出手術は基本中の基本だと思ってます。
これらの手術がきちんとできないなら他に手を出してはダメじゃないのと思いますね。
だからこそこういう手術、病気の治療のためではない手術には
特別な緊張感がありますよ。

今は猫の発情シーズンです。
雌猫が発情すると夜にはうるさくて寝られないですから
そうなると飼い主さんは困ってしまいますね。
だから手術依頼があれば出来るだけ早く
他の手術の予定があってもその間に入れるぐらいに
早急な対応をしています。

ただし手術前の検診、これは大事ですから
必ず診察をしてから、と言うことにしてます。
電話でこれを伝えると「じゃあいい」と言う人も多いんですが
全身麻酔で体にメスを入れるんです。
他の手術と比べてリスクが少ないわけじゃないんですから
その点はご理解いただかないとこちらも責任を持つことが出来ません。
だから術前に診察を受けた場合のみ飼い主さんの意向に沿った形で
避妊・去勢手術を受けています。

それでも今月4件になりますからねぇ。
単純計算で昨年の2倍です。
すごいですね。

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