院長 / つぶやき / 2022.9.24 09:17

あるニュースを見まして。

とある有名飲食業の方が若くして急逝されたというニュースを見ていて
亡くなる前に猫に噛まれたとSNSでご本人が報告されていたようで
死因がそれに関係するのでは、という憶測が流れていたようですが
お店の関係者からは猫に噛まれたこととは関係がないと明言されています。

この件については猫との因果関係はない、ということを前提にします。

ただ実際に動物からの感染によって問題はないのか、というとそうでもないので
注意喚起を含めてご紹介しておきましょう。

まずは
「猫ひっかき病」という病気をご存じでしょうか？

これ冗談のような病名ですが「正式名称」です。
言葉だけからすれば
「猫に引っかかれて具合が悪くなる」と思われがちですけど
実は猫だけではなく犬からもあります。
また引っかかれるだけではなく噛まれてもなります。
ある微生物が原因なのですが、これに感染することで
通常は傷の近くのリンパ節の腫脹、発熱などが見られます。
まれに重症化することもあるようですからご注意ください。

また病原性歯周病菌を持つ犬猫に噛まれた場合
それが浅い傷であれば洗い流せば問題ありませんが
深い傷になった時には結構ひどくなります。
これは私自身が経験しましたが親指の先を犬歯で深く傷つけられ
その後傷が完治するまで2か月以上かかりました。
途中化膿して痛みは酷いし、組織が壊死してはがれてしまいました。
傷の修復は出来たんですけど今だにその部分の感覚はちょっとおかしいです。
まあこれは犬歯が皮膚を貫通して筋肉まで到達していたので仕方ないですね。

最近ではSFTS（重症熱性血小板減少症）が問題ですね。
ご存じの方はまだ多くないかもしれませんが
ダニから感染するウイルス性疾患です。
このウイルスを持っているダニに噛まれると
体内にウイルスが侵入して感染するわけですが
ダニ直接だけではなくウイルス感染している動物から人へ感染した事例が報告されています。
実際に近畿地方の方で猫から感染して亡くなった方がいらっしゃいます。
もっともこの猫は野良猫ですので、家庭内で飼育されている猫で
ダニに感染した経験がない状況であればその猫がウイルスを持っている可能性はありません。
またこのウイルスは犬へも感染します。
ウイルス感染した犬から獣医師が感染した事例もあります。
SFTSがクローズアップされるようになって我々獣医師の側も
ダニに対する対応は今までとは変わりますね。
正直なところ素手で触ることは出来ませんし
ダニをつけている動物の対処も感染防御が必要になってきます。

これら以外にももっとたくさん動物から感染する病気はあります。
しかしだからと言ってそう恐れる必要もないですよ。

まずは動物の体の健康状態を維持すること。
歯周病があるならきちんとそちらの治療をすることです。
またダニだけではなくノミなどの外部寄生虫についても
駆除ではなく予防を行うことが重要です。
そもそも何も策を講じていないで外出すれば
ノミやダニに感染しても何ら不思議なことではないですから
感染してから、ではなく感染しないように予防することが大事です。
それによって動物の体だけではなく
人間への問題も起こりませんから。

それともしも噛まれた場合、まして深い傷だった場合には
躊躇せず病院へ行きましょう。
ただその前に自宅で出来る応急処置として

噛まれたらすぐに傷口を絞る。
これによって血液とともに体内に入ってくるかもしれない病原菌などを排出させます。
その際には水道の蛇口をひねって水道水を出しながら傷を、血を洗い流すしてください。
しばらくそれを続けてください。

これは毒蛇に噛まれた時も同じ処置をします。
絞りだすことで毒の体内侵入を最小限に留めます。

噛まれた直後は患部がマヒしているので痛みは多少で済みますが
時間がたつと病原菌は体内に侵入してくるのも当然ですけど
患部を触ると腫れていて触ると痛いですから。
多少痛いのは我慢して絞り出しましょう。

なんでもそうですけど初期対応が重要ですよ。

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