治療とはいえ、決断は厳しいです。
断脚は文字通り「脚:あしを切断すること」です。
今まであった景色が一変しますので見た目が変わります。
断脚を選択するのは腫瘍が四肢にできた場合がほとんどです。
骨折は何とかもとに戻すことを選択します。
しかし皮膚や筋肉あるいは骨に腫瘍、それも悪性腫瘍が出来た場合
断脚を選択せざるを得ません。
なぜか?
放置しておくとどんどんと広がっていきますし
組織が腐ったりします。
また腫瘍性病変ですから転移の問題があります。
これらのことは近未来のことですが
目の前の問題として、患部の「痛み」があります。
これは直近の問題ですので早々に何とかしないといけませんが
鎮痛剤でコントロールできればまだしもですが
往々にして鎮痛剤程度ではどうにもならないことの方が多いです。
そして最終的には断脚を選択せざるを得ませんが
こちらとしても簡単に決められることではないですし
飼主さんに理解して納得してもらう必要があります。
見た目が変わるという点で言えば
眼球摘出や耳介切除なども該当しますね。
現在当院で断脚を治療として選択した症例が複数います。
いずれも腫瘍性病変であり、またいずれも発症から時間が経過しています。
そんな状況で今から断脚をしてどうなる?と言われるかもしれませんが
患部の痛みや壊死を抱えて生活させるには忍びないですし
転移した場合(現時点でも細胞レベルでは転移しているかもしれません)
寿命が短くなることは間違いないでしょう。
断脚術は簡単そうで実はそうでもないです。
現在抱えている症例は前肢と後肢それぞれですが
前肢の症例は肩甲骨から剥離する予定で
後肢の症例は股関節からアプローチする予定です。
要するに「根元から」ということなんです。
獣医師になって30余年。
断脚した手術症例はそれ程多くはないです。
過去には手術のタイミングを躊躇して手遅れになったこともあります。
また中途半端な切断法を選択してしまったこともあります。
やはりこういう事例の治療に当たっては
相当思いきらないと後々で後悔します。
手術法の選択、つまり「どこから切るか」という点は
熟考の上決めますが、中途半端なことはしない、ということで決めています。
とは言え「元に戻す」手術ではないので
こちらとしても覚悟はします。
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