今だこれに関する情報がバラバラとしてるような気がします。
とにかくよく聞くのが
「高齢だから全身麻酔をすると死亡するかもしれません」
これを言う獣医に逆に聞いてみたいのですが
「若ければ安全なんですか?」
正しくは
「全身麻酔」そのものが、年齢に関係なく「安全性を100%保証できるものではない」だと思います。
また
「高齢動物の場合内臓の衰え、病気があることが多く、麻酔や薬の副作用の危険性が高まります」
と、こんな感じじゃないの?と思います。
麻酔と手術は一体のものです。
手術は麻酔なしでは出来ませんから。
手術も麻酔も要は「技術」です。
上手下手ということもありますが、得手不得手ということにも関わってくるでしょう。
先日も相談がありまして、10歳の犬で手術が必要な疾患(詳しくはわかりません)だったそうですが
上記のようなことを言われて結局手術をしなかった(してもらえなかった?)とのこと。
10歳という年齢を「高齢」と言うならば、高齢でしょうが・・・
私の病院には、いわゆる「年齢換算表」という、「人の年齢に合わせると」というのがあり壁に貼り付けているのですが
これを見ると犬猫の10歳は、人間の50代半ば、となってます。
ちなみにこの年齢換算表は20年以上前に制作されたものです。
だとすると私もそろそろ「高齢」になっちゃいます。
まだ「中年」だと思ってるんですけど。
昔、猫の避妊手術で、どうやっても麻酔の維持ができなかった症例がいます。
まだ1歳になっていない若い猫でした。
結局、手術は断念して原因を調べたところ、腎臓機能障害が見つかりました。
それにより高血圧症を合併してたんです。
例えば、今このような症例の麻酔・手術をするとしたら同じように麻酔の維持ができないのか?と聞かれれば答えは
「NO」 です。
20年前の麻酔方法と今とでは全く「別物」です。
昔はできなかったことが今では当たり前にできるというのは何も麻酔に限った事ではないですね。
それに私も若い頃から比べると相当な数の修羅場をくぐってますし
麻酔担当の婦長も徹底的に勉強してきてます。
それゆえ、慢性腎臓病で高血圧症を合併しているならば、それに見合った種類の薬を使います。
実際、高齢になればなるほど、そういう持病を持った動物は多いわけですし
手術が必要な事例も多くなってきます。
年齢が麻酔リスクに関与しているのは事実ですけど、実際には何が問題なのか?と考えると
個人的には「心臓機能」だと思ってます。
心臓がちゃんと機能していること、これが重要ですから、リスクがある症例については
術前検査に心臓機能検査を行います。
ただ、それで引っかかったら麻酔・手術ができないか、というとこれまた違っておりまして・・・
例えば「犬のフィラリア摘出手術」などがいい例ですが
フィラリアに感染していて、なおかつ手術が必要な状態という時にこそ手術をするのですが
この状態は完全に「心不全」でして、麻酔リスクはもっとも高い状態と言えるでしょう。
また、心臓の機能が低下していることによって起こる合併症として、肝臓や腎臓の機能も低下しています。
麻酔や手術を考えるときに、この状態が一番危険と言えます。
しかし、この時に手術をしなければほぼ間違いなく死亡します。
では、手術をしたら100%治るのか?と聞かれれば残念ながら答えは「NO」です。
フィラリアの手術成功率は、状況にもよりますが、当院での数値は約70%です。
臨床医学・臨床獣医学は確率の学問だと思ってます。
可能性といってもいいでしょう。
「○○だと△△になる可能性が□□ほどあります。」
100%というものはありません。
ただ、100%にできるだけ近づけることは出来ます。
それが臨床だと思います。
| comments (1) |
シェルティ12歳です。1週間前に顎の脂肪腫の手術をしました。クッシングもあります。術後しばらくは調子がよかったのですが、1週間後くらいから食欲低下、下痢、嘔吐が始まりました。身体の中からで何の変化が起きているのでしょうか?
ちなみに手術前にCTを取る為に全身麻酔を1ヶ月の間に2回かけています。
きつそうな愛犬を見るのが辛くて。おたすけ下さい。
ナナちゃん / 2018.9.21 17:59
| EMAIL | URL | L.bXWytk |
このサイトはjavascriptを有効にしてご覧ください。また読み込みにお時間がかかる場合がございます。
当院は診療料金を現金の他、クレジットカード(VISA・MASTER)、WAONで支払いいただけます。
※支払い回数は1回のみです。
※WAONのチャージはできません。