当院で行っている方法などについてご説明します。
元々胆嚢疾患は老齢性のものですが、最近は若齢の犬でもよくみます。
その中で私が一番気をつけているのがプードルとチワワですが、それはさておき。
若齢(6歳以下)で胆嚢に異常が見つかった場合、まずは原因について考えます。
1:食事 高脂肪食を与えていないかどうか おやつを与えていないかどうか
2:性格 特に音に対して過敏な反応があるかどうか
3:飼育環境 多頭飼育であるかどうか
4:犬種 犬種によっては「高脂血症」があります
5:他疾患 特にホルモン分泌の病気があるかどうか
それらを調査したうえで検査に進みます。
1:血液検査 先ほどの高脂血症があるかどうか
高脂血症=胆嚢疾患と言うわけではないですけど、胆嚢炎の悪化には関わってきます。
つまり胆泥が粘液嚢腫へ進行するのが非常に早くなります。
2:エコー検査 これで胆泥、粘液嚢腫、胆石などの鑑別をします。
以上の結果に基づいて以下の処方をします。
1:胆泥症 食事療法(高蛋白低脂肪高線維食)
まずはコストを抑えるためヒルズ ライト(ドライ&缶)を試してみます。
処方食であれば、ロイヤルカナンの満腹感サポートや消化器サポート
またはヒルズのw/d もしくは r/d (こちらはほとんど使いませんけど)
そして投薬。
投薬の目的は「胆泥を胆嚢から排出させて胆嚢内を空っぽにすること」です。
そのためにウルソデオキシコール酸だけではなく、胆嚢収縮作用を持つ薬を併用します。
サプリメントとしてベジタブルサポートも有効な場合もありますが、最初は使わなくてもいいかな、と思います。
もちろん使っても問題はありません。
内科療法の効果があるかどうかの確認のため定期的にエコーの検査をします。
ホントは血液検査もしたいところではありますが・・・
エコーでは胆嚢内の胆泥が減った、あるいは無くなったとなればハッピーな事なのですが
こちらの効果期待度は30%ぐらいです。70%の症例は効果が見られないのが現実です。
最終的には3か月間処置を継続して最終判断をします。
3か月後に「効果あり」となればそのまま同じ治療を継続します。
30%の症例ではこのような結果になりますが、投薬を止めると残念ながら再発します。
そのため投薬の継続となるので、一概に喜んでいいのか、正直複雑ですね。
「無効」と判断した場合は、それ以上の投薬を継続することに意味がないかもしれません。
あるいはもうちょっと続けてから判定する場合もありますが、3か月投薬して効果がない場合
ほとんどの症例で「悪化」あるいは「進行」が見られます。
特に粘液嚢腫となっている場合は、投薬の効果はほぼ期待できません。
その場合は次の手段、手術を検討します。
2:粘液嚢腫
手術を希望されない場合はウルソデオキシコール酸の投与を続けたり
ベジタブルサポートを単独使用、あるいは併用したりします。
ただ、粘液嚢腫まで進行すると元に戻る可能性はほぼありません。
体調に異常をきたさない程度に体を維持することはできるでしょうけど。
ただ、いつ胆嚢がパンクするかわかりませんのでやはり定期的な検診は欠かせないです。
体調に異常が見られたらすぐに手術の準備をする覚悟でいます。
3:胆石症
これが見つかったらすぐに手術しましょう、とお話しします。
胆石が原因で、胆嚢内出血や胆嚢破裂の危険性があります。
これまで当院で「胆嚢破裂」と判断したものの半数は胆石が原因でした。
胆石がいつまでも「静かに」していると言う保証がないのです。
胆嚢手術は胆嚢炎が軽度であればさほど危険な手術ではないと思ってます。
ただ、往々にして重症になってからの手術、と言うのが多いので
胆嚢破裂がなければ、あるいは膵炎の合併症がなければ
または黄疸が出ていなければ、何とかなると思います。
胆嚢の手術のタイミングについて獣医師の方から質問を受けるのですが
進行性疾患と言う点で考えるのであれば、胆嚢炎も腫瘍も同じだろうと思ってます。
初期の小さいうちに腫瘍を摘出するのか、大きくなって他の臓器に転移してから手術するのか、と
考えればどちらが「普通の対処」なのかお分かり頂けるでしょう。
胆嚢炎もいつまでも胆泥のままでいてくれるわけじゃないのです。
進行速度の違いはあれども、粘液嚢腫になったり胆石になったりします。
黄疸がなかったのに黄疸が出現したり、胆嚢が破裂したりもします。
そうなってからの手術となるとリスクも高いですし、死亡率も跳ね上がります。
早期発見が出来たのであればその後の対処が遅れることの無いように
監視の目を光らせておく必要があると思ってます。
| comments (18) |
ルーシーさん おはようございます。
ここのコメント欄は文字数の制限があるのと内容がかなり個別的になってきますので、出来ればHPの「お問い合わせ」からメールをいただけませんでしょうか。そこからなら十分な説明が出来ると思いますので、よろしくお願いします。
岡本宏之 / 2022.11.1 08:48
| EMAIL | URL | 6B9LPF.6 |
お返事いただき本当にありがとうございます。手術するとしたら黄疸が高い時は危険と考えてよいのでしょうか。今日新たに血液検査したところ、TBIL2.5 AST242 ALT>1000 CRP3.15 その他はほぼ変わらずでしたが、肝臓が上がってしまい手術するにしてもまだ先になりそうです。黄疸が出てる時点でもしや手遅れなのでしょうか。担当医が気を遣って濁してるのかな など考えすぎてしまってます。術後の合併症になる可能性も大きいのでしょうか。今後の治療方針、先生でしたらどうお考えになるか教えていただきたいです。m(_ _)m
ルーシー / 2022.11.1 01:39
| EMAIL | URL | 7h1zZqMY |
ルーシーさん おはようございます。
経過を見る感じでは胆嚢炎が先にあってからの肝炎という風に感じます。ただ現状TBILが高いのでこれが胆嚢炎由来の閉塞によるかどうかの鑑別が必要になると思いますが、基本的には黄疸の処置が優先します。年齢や心臓の件に関しては昨年子宮蓄膿症の手術をしているということですので、おそらくさほどのリスクにはならないと思います。ということで私見としては黄疸の治療が最優先かと思います。
岡本宏之 / 2022.10.31 10:12
| EMAIL | URL | 6B9LPF.6 |
度々すみません、下記にコメントしたルーシーです。
エコーは、胆嚢は破裂はまだしてなく石の様なものもないが壁は厚くなってるとのことでした。肝臓は、形が丸くなってるそうです。
どうかご意見アドバイスいただけないでしょうか。
何卒よろしくお願いいたします。
直近の血液検査
WBC157 RBC672 AST248 ALT658 ALP1225> TBIL2.9 CRP4.4
ルーシー / 2022.10.31 01:08
| EMAIL | URL | MJ3v2unY |
初めまして、突然のコメント失礼いたします。
15歳のダックスが急性肝炎から胆嚢炎になり、現在入院しています。静脈点滴を約3週間して、血液検査の数値は徐々に下がりましたが、短足ゆえに血管に限界がきたため、今は皮下点滴と飲み薬のみになり5日目です。担当医さんからは通院に切り替えて飲み薬で様子をみていくか、肝臓の数値は下がってきたので摘出手術できなくもないけど、高齢で心臓も悪く合併症のリスクも高いのでおすすめはしないと言われ迷っています。
本人(犬)は食欲も少し出てきて見た目は元気です。
心臓は憎弁閉幕症B2で4年ほど薬をのんでます。
ちょうど一年前には子宮蓄膿症で摘出手術をし回復は早く肝炎になる前までは走るほど元気でした。
私としては、摘出手術してこの先も長生きしてほしいので
ルーシー / 2022.10.30 23:47
| EMAIL | URL | gy6.tENs |
先生、お忙しい中早々にお返事いただきまして、感謝申し上げます。
そうなんですね。
かかりつけ医からの歯切れの悪い説明に疑問符しかなく、こちらに辿り着きました。
お陰様で、冷静に色々な選択肢を考えてみようと思います。
不安な中、お返事いただき励まされました。
本当にありがとうございました。
こちらのコメント欄も良い情報ばかりで、沢山参考にさせていただきました。
abe / 2022.10.12 16:16
| EMAIL | URL | AcsL.LDA |
abeさん こんにちは。
胆石が見つかったと言うことで獣医の方からいわれている言葉でご心配のことと思います。高齢だからというのは獣医の側からよく使う言葉ですけど、現在12歳と言うことで私個人的には高齢で危険、とは思わないです。当院で胆嚢手術をした最高齢は18歳でしたし、15歳以上もざらにいます。もしかするとそちらの病院は胆嚢摘出手術に自信がないのかもしれません。ほかに手術を引き受ける病院が見つかればいいと思いますが。
岡本宏之 / 2022.10.12 11:13
| EMAIL | URL | 6B9LPF.6 |
はじめまして。突然のメールで失礼いたします。
昨日体調不良でかかりつけ医にかかり、レントゲン撮影と超音波で大き目の胆石が見つかり、ネット検索でこちらに辿り着きご質問させていただきました。
チワワ 雄 12歳
病歴
2018 僧帽弁閉鎖不全症→心臓手術により今の所問題無
2019 誤嚥性肺炎
2020 自己免疫性疾患
2022 10月 胆石
2020年の自己免疫疾患により、現在ガスター10、プレドニン、ウルソ、グルタチオン、イムラン、プレドニンを服用し、食事はロイヤルカナン満腹感サポートで様子を見ながらも元気に過ごしてしていました。
ここでご質問なのですが、かかりつけ医からは、高齢犬&病気持ちなので、手術はできない。胆石が破裂しないのを祈るしかないです。とのお話しでした。ただ、飼い主として、祈る
abe / 2022.10.12 09:12
| EMAIL | URL | AcsL.LDA |
murasakiさん おはようございます。
まず最初に、チワワは胆嚢炎の好発犬種です。当院でも「若齢」で「胆石」と言うパターンが非常に多く見られます。それゆえ5歳で胆嚢炎(破裂と言うのは珍しいですけど)としても特に珍しくはないと思います。なぜチワワでそのようなことになりがちなのか?と言うことについてはよくわかりません。飼育環境については下の方にも同様の質問と回答がありますのでご覧ください。
岡本宏之 / 2018.10.24 09:23
| EMAIL | URL | iBAzvxqo |
初めまして。チワワ女の子5歳で胆嚢粘液嚢腫となり先日手術をしました。開腹したら胆嚢破裂してましたが、胆嚢摘出し現在は元気にしています。
まだ5歳でこの病気になった原因が知りたく検索していてこちらにたどり着きました。
原因の内2と3が気になりまして質問させていただきます。
2:性格 特に音に対して過敏な反応があるかどうか→過敏で特定の人以外・バイクのエンジン音・拭き掃除の音等々かなり敏感です。
3:飼育環境 多頭飼育であるかどうか→3年前に同じくチワワを保護して2頭います。
これらがどう影響しているのでしょうか?もしよろしければ教えてください。
murasaki / 2018.10.23 18:16
| EMAIL | URL | Ifjfis1w |
ミニチュアダックスフント3歳男の子
1歳で胆泥がみつかり、経過観察、途中からウルソ\開始も、改善せず、手術しました。
術後1週間目に嘔吐。肝臓の数値、CRP、白血球が、上がってました。
が、退院後、抗生剤も服用になったので、嘔吐はそれが原因かな?と、私は思ってました。
点滴し、一旦下がり始めましたが、飲み薬にして2日目、また、どかーんと上がってました。(術後11日)
本人は、いたって、元気、食欲旺盛、快便です。
そういうこともあると、言われてますが、
そうであるなら、もう少し様子をみます。
食事は、低タンパク質と思い、
低タンパク低脂肪を与えてました。
高タンパクなのですね!間違ってしまって、肝酵素をあげてしまったのかもですね、、( T_T)
チキン、大豆、ミルク、もろこしにアレルギ
とこ / 2018.10.6 14:49
| EMAIL | URL | NVgQ7SNA |
稲垣さん こんばんは。
1cmの胆石という事ですが、これは相当大きなものとなります。これが事実なら当院であれば早急に手術をします。大きな石が胆嚢内をコロコロ転がることで粘膜を損傷してしまうからです。また食事に関しては蛋白質の摂取不足や野菜などの炭水化物の過剰摂取は肝臓や胆嚢には良くないとされています。よって当院では「高蛋白低脂肪のフードのみ」と言うお話をしています。
岡本宏之 / 2018.3.19 21:19
| EMAIL | URL | xGSFfv6g |
はじめまして
カニーヘンダックスの男の子5歳の子が
わりと小さい頃から肝臓の数値が高く
半年ごとの血液検査をしていました、
サプリはプロヘパフォスをずっと与えています。
今のところは数値も以上に高い訳ではないので
そのままにしてますがたまに胆泥があったりと
してますがウルソ\を飲まずに様子をみてました
今月に又検査をしたら胆石になってました
1センチ位だと言われましたが
やはり今の時期に手術はした方が
いいですか?食事は毎日野菜と納豆
ドライフード又はささみ又は刺身など
与えてます。フードはドライフードだけのが
良いのか教えて下さい
稲垣真弓 / 2018.3.19 08:57
| EMAIL | URL | J27ADuAE |
marikoさん こんにちは。
胆嚢炎の悪化用意の1つに「ストレス」がありますので性格や環境変化も無関係ではないかもしれませんが、やはり一番大きな要因は「食生活」だと思います。
粘液嚢腫と言うことですが、最終的には外科手術となると私自身は思っています。現状体調が良いのであれば今後のことを考えて「予\防的手術」と言うことになります。また癲癇や心臓病も程度によりますが、薬でコントロールが出来ている状態なら麻酔リスクはそんなに気にされてなくもいいかと思います。
岡本宏之 / 2017.9.4 12:39
| EMAIL | URL | iBAzvxqo |
はじめまして!突然のコメント失礼いたします。我が家の5歳のヨーキーミックスが胆嚢粘液嚢腫と診断され、ネットを検索していてたどり着きました。うちの子はとてもこわがりで敏感、特に音に弱いのですが… 胆嚢が悪くなったことに影響があるのでしょうか?また引っ越しや家族構\成の変化、新しいワンちゃんのお迎えなどここ半年程でいろんな変化があり、それらも良くなかったのでしょうか?粘液嚢腫までになると、やはり体力のあるうちの摘出がベストなのでしょうか?軽いてんかんと僧帽弁閉鎖不全があるため、麻酔などリスクを懸念しております。
mariko monma / 2017.9.3 18:05
| EMAIL | URL | EtIaF5tw |
さっそくのお返事ありがとうございました。
ストレスですか。。。
胆嚢の働きがストレスで悪くなってしまうのですね。
ストレスを少しでも減らすことができないか
良く考えてみようと思います。
主治医は胆嚢の摘出は非常に難しい手術になるということで
あまり積極的ではないようですが
それで完治も望めるのなら手術も視野に入れて
話を伺ってこようと思います。
不安でいっぱいの中
返信を頂けてとても心強かったです。
本当にありがとうございました。
にゃんこ / 2015.10.28 01:12
| EMAIL | URL | OW9G2rVU |
にゃんこさん こんばんは。
性格・性質というのはどうにも仕方ないですね。いわゆる「ストレス」と感じてしまうわけです。ストレスは体のホルモン分泌に関与して結局胆嚢の運動性を悪化させてしまうのです。若齢の場合、進行が早い傾向にありますので外科手術も念頭に入れておいた方がいいかもしれません。手術で胆嚢摘出後は「完治」となりますので。
岡本宏之 / 2015.10.27 21:27
| EMAIL | URL | CPcjPzpc |
初めまして、突然のコメント失礼いたします。
3歳のチワワが胆嚢の具合が非常に悪く、投薬による治療を始めました。
色々検索してこちらへたどり着いたのですが
原因の2と3が気になっております。
とても音に神経質で無駄吠えが多いことと、
8歳のチワワを一緒に飼っていること。
これらが何か胆嚢疾患の引き金となっているのでしょうか。
まだ若いので何とかして治してあげたいです。
お忙しい所申\し訳ありませんが宜しくお願いします。
にゃんこ / 2015.10.27 09:16
| EMAIL | URL | OW9G2rVU |
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