岡本動物病院

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院長のブログ

痒いのか?

院長 / つぶやき / 2017.6.14 17:30

掻く仕草は人間の場合を想定しているわけです。

掻く仕草が見られれば「痒い」のだろうと想像します。
それは間違ってないですが、実は「ホントに痒いのかい?」と言うことです。

例えば・・・
人の場合、後頭部をカキカキする場合、必ずしも痒いとは限らないですよね。
照れ隠しの場合にもやりますね。
犬や猫がそんなことするか?と言うことなんですが・・・
結論から言えば「します」。

特に猫で顕著ですが、猫は何かしらしていて思わぬ失敗をすると
それをごまかそうとしているかどうかは不明ですが
全然違う行動をしてみせます。
これは「転位行動」というものでネコ科動物特有のものとされています。
例えば獲物を狙って飛びついたはいいけれど
失敗してしまった場合、着地したところで急にグルーミングをしたりします。
端から見れば「俺は獲物を取り損ねたんじゃねぇよ」とでもいっているように・・・
人間ならば「笑ってごまかせ」ってことなんでしょう、と言うところで
猫もそうなんじゃない、と言う人間の想像です。

『体を痒がるんです』と言うことで来院される場合は臨床の現場では多いんですが
ホントに痒いのか?と言うのを見極めなければなりません。
飼い主さんが嘘をついているということではなく
皮膚病なのか、皮膚炎なのかはたまた別の原因かというのを見極める、と言うことです。

まずは遠目で体全体を見ます。
明らかな炎症像・脱毛があるかどうかということです。
次いでどの部部を掻いているかを聞き出して
その患部をよく診ます。
赤くなっているか、フケがあるか、傷になっているか、毛が抜けているかなどを診ます。

通常痒みがある場合には赤くなっているのが普通です。
皮膚が黒くなっている場合には、痒みがないのが普通です。
しかし皮膚が薄くなっている場合は別ですが。

皮膚病と言うことで転院されてくる場合が多いんです。
要は「痒みが治らない」からです。
その場合、大抵はアレルギーと言う診断がついていることが多いですね。
ではホントにアレルギーなのか?と言うことを確認しなければなりません。

アレルギー性皮膚炎の場合、身体のどの部位に皮膚症状があるか、と言うのが大事な所見となります。
例えばアトピー性皮膚炎の場合だと顔面に症状が出ます。
眼瞼周囲、口唇部、耳介などです。
ここに症状がないとなるとアトピーは考えにくいと言ってもいいでしょう。
先日転院された事例では、前の病院でアトピー性皮膚炎と言うことで
投薬、処方食が出されていましたが、相変わらず体を掻いているということでした。
ちなみに・・・犬種と言うのも大事な要素ですし、初発年齢も大事なんです。
その犬の体には・・・炎症反応が全くありませんでした。
よく言えば「皮膚炎が治ったんだろう」となりますが
飼い主さんが言うには、現在も体を掻いているわけですので治っているとは言えませんね。
しかし皮膚症状がなくアトピーとはこれいかに、となるわけですが・・・

結論から言えばこの犬の「体を掻く仕草」は厳密に言えば「痒み」ではありませんでした。
もっとも皮膚症状がないんですから当たり前と言えば当たり前なんですけどね。
ただ体を後肢で掻いているのは事実のようなので「掻いている」のは間違いなしです。
では痒くもないのに掻いていたということはどういうこと?かと言いますと
後肢で掻いていた場所(体幹)に「気になる刺激」が加わっていた、ということです。
犬が気にする刺激がなければ掻かないんですね。
だからこれは皮膚病ではないんです。

どうしてこれがわかったかと言うことなんですが
当院では血液検査も何もしてませんが、前の病院では色々やってたみたいです。
これは皮膚疾患に限ったことではないんですが
要は「聞き取り調査」で「問診」です。
これがちゃんと行われずに検査しちゃダメですよ、と言うことです。

最近、人の方では「総合診療医」というのがクローズアップされています。
医学では専門が細分化されていますので初診の時にどこの診療科にかかればいいかわからないですね。
そういう患者さんに対して最初に診察に当たる医者が総合診療医です。
NHKの番組で「ドクターG」と言うのをやってます。
放送曜日は忘れましたが気になる方は是非見てみてください。
実は獣医療こそ「総合診療医」であるべきなんです。
そこで一番大事なのは「観察すること=視診」と「稟告(訴え)を聞くこと=問診」です。
これがきちんとできれば体のどこが悪いのか、どこを調べればいいのかが分かってきます。
そして病気か病気ではないか、これもわかります。

視診というのは患部を見ることではなく体全体を見ることです
飼い主さんの稟告を聞く前に、歩き方、被毛の状態、栄養状態、立った時の姿勢・仕草などを「観察」することです。
問診は飼い主さんの言うことだけではなく、こちらからも色々と質問をして答えを導き出すことです。
これが十分にできてから次は検査、と言う段取りになるんですが
とかく、すぐに検査!と言う場合が多いようですがこれは間違いです。
本当に検査が必要なのかどうか見極めないと、動物の体に負担がかかりますし
飼い主さんの経済的負担もかかります。
「そんなの関係ねぇ」ではダメですね。

病気ではないのに薬を与えても良くなるわけがありません。
良くならないから次々と薬を替える、追加検査をするということになりかねません。
それがすでに治療ではないですね。

動物は言葉を喋ることが出来ません。
でも体で、ボディランゲージで訴えているわけで
それを読み取れるのが獣医師だろ、って思います。

体を掻いているから「痒いんだ」と決めつける前に
色々聞いてみることが大事です。
それは耳だけで聞くのではなく、目で「聞く」、頭で「聞く」と言うことですね。
これが出来てこそ「獣医師」だと思います。

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