岡本動物病院

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院長のブログ

術前検査

院長 / つぶやき / 2017.6.17 18:49

安全のため、と言うことなんですが

全身麻酔をかける処置をする場合、事前に体の検査を行う。
これについては何ら異論はありません。

最近の傾向・・・なんでしょうが
検査項目が非常に多くなっています。
通常の血液検査はもちろん、血液凝固系検査・レントゲン検査・エコー検査・心電図検査など
およそ考えられる検査はすべて行うということのようです。

昔、ある外科のセミナーがありました。
講師の先生は私より1歳年上で、外科の認定医です。
その講義の中で避妊手術・去勢手術の事が出てきました。
どこの病院でも行う手術と言うことでテーマに上がったんですが
「こういう手術の前にあれこれと検査はしませんよね?」と話をされて
会場では多くの獣医が「うん」と頷いてました。
もちろん私もその通りだと思ってました。

これは誤解のないようにお願いしますが
例えば野良猫の避妊手術の依頼があった場合
術前にどれだけの検査が「出来るか」と言うことなんです。
そもそも人の手にかからない動物ですので捕まえるだけでも大変な状態で
どうやって事前検査をするか?と言うことですね。
また費用の問題も出てきます。
個人で飼育されているなら検査処置について飼い主さんがすべて納得されて支払されますが
野良猫の場合、誰が飼い主さんですか?ってことです。
もちろん手術にかかる費用は連れてきた方に請求することになります。

野良猫の、あるいはそれに近い状態の動物を捕まえて
ギリギリ採血は出来ると思いますが、その他の検査は不可能だと思います。
その他の検査は基本「動かないこと」が前提ですので
暴れる場合には鎮静なり麻酔なりが必要です。
ということは検査をために検査の前に鎮静、麻酔をするということになりますから
まさに「矛盾」ですよ。

また先の専門医の先生の発言の中には
手術費用を軽減するという、避妊手術・去勢手術の大前提の上に成り立つものです。
多くの病院では避妊手術・去勢手術の費用は、他の手術に比べて
相当に「低価格」に設定しています。
これについてご存じない飼い主さんも多いかもしれませんが
そもそも「病気の治療」ではないわけですので
極端に言えば「しなくてもいい手術」とも言えますね。
ただ、飼育するうえでの問題解決とか動物の側の将来的な病気の予防と言う観点から
行われている手術ですので、必然的に他の「治療のための手術」とは考え方が変わってきます。

術前検査として、最も知りたいことは「心臓機能」と「肺機能」だと思います。
麻酔をかけるわけですから、麻酔薬が体のどこに一番負荷をかけるかと言うことを
考えれば心臓と肺になります。
例えば心臓が非常に悪いとか呼吸状態が悪いとか、そういう状況であれば
普通は手術はしません。
ただその状況であってもしなければならない時というのも当然あります。
その時のリスクがどれぐらいあるかを事前に知っておく必要はあります。

これを知るには血液検査がメインではなく心臓エコー検査が一番重要だと考えています。
当院では、中年齢以上の動物の手術をする場合には術前に心臓エコー検査を行います。
ただし、当院の常連さんで定期的に来院されている動物の場合には
必ずしも、と言うことではないです。

ここでは自分がかかりつけ医であることが大事なところで
長年通院されている動物の体の状態はすべて把握していますから
体のどこに異常があるか、起こったかは視診・聴診・触診で概ね分かります。
それでも確認が必要である場合には検査をしますが
上記のような項目をすべてするということはほとんどありません。

要するに何が言いたいか、ということなんですが
書いていて自分でもよくわかんなくなりました(苦笑)。

検査項目が多ければ多いほどこちらの欲しい情報がたくさん集まります。
これが安心安全につながるというのは事実です。
しかしすべての事例で同じ検査を行うというのがちょっと違うかな、と。
ケースバイケースとか臨機応変とか、そういうことを言いたいわけです。
検査をする手間を惜しむということはありません。
一番気にするのは・・・費用のことですね。
検査をすればするほど費用が掛かります。
あくまでも個人的な意見ではありますが
必要最低限の検査をする、ということを基本概念としていますので
それ以外の検査は・・・不必要と判断できるものはしなくてもいい、と思ってます。

もしも肝臓が悪かったら?
もしも腎臓が悪かったら?
それを事前に知らず見逃して事故が起こったら?

そういう不安を解消するための検査、と言うことなんでしょうが
もしも内臓がめちゃくちゃ悪ければ、臨床症状があるでしょうし
それを見逃すということは専門家としてあり得ないでしょう。
検査数値が正常値を少々はみ出ているということはしょっちゅうあります。
ただそれが原因で麻酔がかけられない、手術が出来ないということはないでしょうし
それで事故が起こったとするならば、他の要因が関わっているかもしれませんね。

色んなことを想定して手術に向かうわけですから
肝臓とか腎臓が悪いとしてもそれを先に想定して
万一に備えて手術に入ります。

あるニュースでしたが、避妊手術の料金は安いんだけれど
術前の検査費用と術後の処置の費用が高額であり
最終的には避妊手術料金の2倍以上がかかった、とありました。
このことを飼い主さんがあらかじめ了解していたなら問題になることはないです。
しかしこういったことが当たり前では困ります。
トータルでいくらかかるのか、を事前にあらかじめ説明することも大事だと思いますね。

ニュースではなく当院で実際に見たことのある事例では
避妊手術料金の3倍請求されたというのもありましたし。

石橋を叩いて渡るのも正しいとおもいますが
過剰診療と揶揄されないことも大切だろうと思いますね。

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