院長 / ニュースレター / 2014.11.10 23:45
最も多く行われるであろう手術ですがトラブルも多く見られます。
残念なことですが。
今回の症例は 猫なのですが「以前他の獣医のところで避妊手術を受けたのだが、その後も発情兆候が見られる」ということで電話相談を受けました。
それが事実だとするならば卵巣が残っているということだろうと、その場合再手術となるでしょう、答えました。
そして実際に再手術となったわけです。
手術前にホルモン検査もしようかと思ったんですけど、飼い主さんと相談して、結局は開けたほうが早いだろうということになりました。
昔は動物の性ホルモン検査は出来なかったんですけど、今は血液で調べられますから便利といえば便利ですね。
まず、皮膚の縫合面を見てみると、なんとも小さな傷でした。よって卵巣摘出を行ったのだろうと想像できます。
そして違和感がもう一つありまして・・・どう見ても真ん中じゃないんです。正中より左によってしかも斜めになってました。
まあ、それでも筋層で正中切ってればいいだろうと思ったんですがそれは淡い期待でしたね。しっかり皮膚の真下で正中ではなく左側、つまり筋肉をざっくりと切られてました。
気を取り直して正中切開を行ったところ、そもそも犬猫の子宮はY字の形になっており、左右の子宮角は頭側に伸びてそれぞれ左右の腎臓のお尻側にあるのですが、これが正中線直下で子宮角が癒着しており尚且つ卵巣の組織が残っておりました。
これなら発情兆候があってもおかしくない・・・・というよりこれは避妊手術と言えるのか?
以前にも卵巣遺残の症例をご紹介しましたが今回の事例はあれよりもっとひどい状態でした。
避妊・去勢手術は動物病院で最も多く行われる手術だと思います。そして最も事故報告の多い手術だと思います。
今回のような卵巣遺残や子宮断端腫、また手術時の感染あるいは出血による肉芽腫形成や他臓器・腹膜などとの癒着などこれまでも結構な数の事例を診てきました。
獣医師側からはいろんな意見があるでしょうけれど、個人的には最も気を使う手術であり、その手技は他の難手術の基本であると思ってます。
かつて若かりし頃「避妊手術は外科手術のαでありΩであると思う」とある先輩獣医師に対して言ったところ一笑に付された経験があります。
「あぁ この人は軽く考えているんだな」と腹の底で思いましたが、決して安易に、軽く考えてよい手術だとは今でも思っていません。
今回の猫は発情兆候のみならず、術後活動性の低下や食欲不振なども見られていたようですから、ホルモン反応性と言うだけではなく物理的な痛みもあったのでは?と想像します。
手術はちょっと手間取りましたが無事に終了し、その後発情兆候はもちろんなくなりましたし、活動性も取り戻して元々の「やんちゃ」な姿が戻ったと飼い主さんから連絡をもらいました。
「避妊・去勢手術を決して侮るなかれ」です。
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