院長 / つぶやき / 2020.12.17 10:03

治療前と後ですが

例えば歯周病。
軽症であれば歯肉が赤く腫れますけどその程度であれば
少なくとも「食べられない」ほどの痛みはないでしょう。
人間でもこれはよくあることですし。
しかし重症・進行した歯周病では
歯根部はおろか骨にまで壊死が進行していることが多々あります。
こうなるととてもじゃないですが噛む事が出来ません。
人間の虫歯なら噛んだ時に歯がしみる程度ですけど
歯を支えている骨が壊れてますから
噛んだときの衝撃は相当なものになるはずです。
そんな時、人間は「降参」しますが
動物は何とか工夫して食事を食べます。

ここを見逃してはダメなんですよ。

痛みを堪えているわけですから
食べるのに時間が掛かっているはずです。
また通常とは違う食べ方をしているはずです。
その辺に気づいてやりましょう。

痛みは「肉体的ストレス」です。
これが長期化することで
途中のプロセスを端折ると
最終的に免疫力が低下します。
また歯周病の場合は細菌感染であることがわかっていますが
病原性歯周病菌の放出する酵素、イコール毒素と考えてもいいでしょう。
これが血中に入り込んで他臓器へ悪影響を及ぼすこともわかっています。

猫ならば腎躁病を
犬ならば心臓病を、という風に。

ただ飼主さんの中には
手術をするということは
痛いことをするからしたくない、と考える人が結構います。
特に高齢動物の場合は顕著です。

これについては正しいとか間違っているとか
議論をしたところで不毛なので敢えてふっかけることはしませんが

自分の身に置き換えて考えてみれば？

とは思いますね。

ただそれでも

人と動物は違うから

と返ってくることもしばしばです。


私も犬2頭、猫1頭の飼主です。
猫はこれまでに去勢手術、口腔外科（抜歯処置）2回の手術を行っています。
去勢手術は室内でマーキングをやらかしたので行いました。
それ以後はマーキングはありません。
口腔外科は、先ほど書いたような症状がありましたので実施しました。
抜歯後は食事をスムーズに行っています。

犬は若い方は去勢手術を行いました。
これも室内で2回やらかしたので行いました。
もう1頭は飼育開始当初から（譲渡犬ですので）
フィラリア感染と胆嚢粘液嚢腫を検査して確認していました。
フィラリアのほうは症状が見られないので手術はせず
心臓保護治療として投薬を行っています。
胆嚢粘液嚢腫のほうは食事むらと異食性・胆汁嘔吐が見られるようになったので
摘出手術を行いました。
術後はすっきりしたようで食事むらは元々の癖もあるので完全に治まってはいませんが
異食性と胆汁嘔吐はなくなりました。

正常な状態になったのを見ていると
飼主としては「平和だな」と思います。

生きていれば体のあちこちに色々障害が出てきます。
年を取れば尚のこと、人間も同じですよ。
そのときのトラブルが『痛い』とか『苦しい』という症状が伴うものであるならば
それを解消・改善するために手術をすることに
私は何ら抵抗がありませんし、ウチの家族も同じ意見です。

人間の医者の場合、自分の身内の手術執刀はしないそうですが
それは感情が邪魔をして正確な精神状態を保つことが難しいから、だそうです。
獣医の場合はどうかというと、同じようなことはあるでしょうね。
またそれがあるからかどうかわかりませんが
少なくとも私の周りの獣医は自分の犬猫の手術はしたがりませんね。
なぜそうなのか、私には理解不能です。
飼主さんには手術を勧めるくせに
自分のとこのことになると一気に消沈するとは。

痛い、苦しいというのはどういうことなのか。
それを知っているはずの立場ですから
私は胸を張って治療を勧めます。

ただどうしても嫌だといわれれば
それは飼主さんの意思ですから
私は引っ込みます。

将来起こるかもしれない最悪の事態は想定していますが。

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