院長 / つぶやき / 2023.12.5 18:14

当院初診の方でこれを口にする人多いですが。

そんな時に私はいつも言うのですが
前提として「家族の一員として」考えているならば、です。

「自分の身に置き換えてみて」　と。

加齢とともに体には経年劣化、もっと言えば細胞レベルでの劣化が起こり
その結果様々な病気となるわけで、これは自然の摂理でしょう。
人の寿命で言えば、現代は高齢化社会ですので
死因の一番は悪性新生物、つまり「癌」です。
これが江戸時代までさかのぼれば平均寿命は今よりもっと短かったはずですので
癌に罹患する人の割合は少なかったんだろうな、と思います。
動物においても高齢化は進んでいますから
必然的に癌患者は増えているはずです。

また癌じゃなくとも老齢性疾患は加齢とともに増えます。
当院で言えば「歯周病」「変形性脊椎症/関節炎」「心臓病」「腎臓病」など様々あります。
治療して治すことが出来るものもあれば、治せないけれど今よりいい状態に持っていくことは出来るものなど
疾患の種類によって治療の目的は変わります。
いずれにしても「痛い・苦しい」からの解放という点では一緒です。

体調の変化の目安として、最も重要視しているのは体重の変動です。
これは家庭でも出来ることなので是非行ってみてください。
パターンは大きく分けて３つあります。

1：食事量の変化はない　　　体重も変化ない
2：食事量の変化はない　　　体重が減ってきている
3：食事量が減っている　　　体重が減っている

これは食事内容が変わっていないという事が前提ですが
まず1の場合、これが普通であり理想です。
こういう場合には少なくとも健康を脅かす疾患はないだろうと想像します。
問題は2の場合で、この時点で異変に気付く飼い主さんはとても優秀だと思います。
つい「食べているから大丈夫だろう」と思いがちですけど体重が減っているという事は
食べたものが身になっていないと考えますので
この時点で体に異変が起こっている可能性は極めて高いと思います。
後はどこが、どの程度悪いのかを見つけるのが我々獣医師の仕事です。
3の場合は誰でもわかりますでしょう。
食べてないんだから体重が減っているわけでこれを異常と言わずに何というのか、です。
ただそんな時に、違うものを与えたら食べたから一安心という人が結構多いです。
普段ドッグフードしか与えていない犬にソーセージを与えたらそりゃ食べるでしょう。
でもそれは一時的なことであり何の解決にもなってないです。
結局再び食べなくなったという日が続いてからようやく受診というパターンは多いです。

体のどこに異常があるかを検査して調べるわけですが
原因が分かったところで治療開始となります。
ただ、今から治療開始して「間に合うか」どうか。

内科疾患は徐々に悪くなっていき、限界を超えたところで症状を現す。
外科疾患は急に起こるので急に症状が出る。

これはこれまでの経験から身につけたものです。
内科疾患を内臓疾患と言い換えればもっとわかりやすいかもしれません。
急な内臓疾患となると例えば中毒性のものがありますがこれは容態が悪くなる直前に
毒性物質を口にしたから起こることで、ほとんどそういうことはありません。
内臓機能の衰えがあると体重が減る、そう考えていいと思います。
外科疾患は怪我と考えてください。
事故にあった、高いところから落ちた、転んだなどですね。
ただすでに症状があって足もとがおぼつかない状況があったとすれば
徐々に運動機能は落ちていたでしょう。

経年劣化という言葉があります。
年を取れば体も長年使っているわけで
あちこちにガタが出てくるのは人間だけの専売特許じゃありません。
それどころか動物の方が老化の速度は速いわけですので
この前までなんともなかった、というのは通用しないです。
年を取ってガタが出た場合、機械なら部品交換が出来ますが
生体はそうはいかないです。
やはりメンテナンスをして長持ちさせるというのが必要になってくると思います。
また年相応に色々と変化をつけることも必要でしょう。
例えば食事内容とか運動量とか。

年だから、そうですね。
だからこそ色々トラブルが起こるんです。
我々と一緒でしょ。
と最近は我が身を振り返って痛感します。

| comments (0) |