院長 / つぶやき / 2017.10.18 10:01

色々とありまして

「耳を痒がる」という事で病院へ行く飼い主さんは多いかと思います。
ただ「なかなか治らない」と言う話もよく聞きます。

なぜ、病院に行ってるのに治らないのか。

外耳炎の場合、その原因として多いのは
感染症・アレルギー関連疾患でしょう。

感染症の場合、マラセジアという常在酵母菌の存在がややこしくさせてきます。
元々そこにいる菌ですので、これが単独で悪さをすることはほぼありません。
何かしらの原因があって、マラセジアがそれに乗っかってくるというのが通常です。
ただそうなるとマラセジアをまずは何とかしないと奥に潜んでいる原因を除去できません。

マラセジアを完全に駆除することもできません。
数を減らすことは出来ます。
それには薬を使うわけですが、その薬を患部に効かせなければならないわけで
もっとも効果的なのは耳に直接入れることなんですが・・・
これが大きなハードルになってきます。

毎日、定期的に耳に薬を入れる、ということは
飼い主さんにやってもらわないといけませんが
少なくとも当院では「出来ない」という飼い主さんが少なからずいます。
逆に「出来る！」」とか「やる！」と言う飼い主さんのとこでは
相当高い確率で治ります。

元々耳は敏感な組織で、そこに炎症があれば
その痛みに対する反応は過敏です。
だから動物側からすれば「絶対に嫌」と言うリアクションをするのは必然です。

しかし、やってもらわないと治療は上手くいかない
これもまた事実です。

投薬と言う方法もありますが、直接患部に薬を効かせるのと比べれば
効率も効果も落ちます。

これは目の治療でも同じことです。
角膜炎・結膜炎とくれば治療は「点眼」がメインです。
しかし点眼は点耳よりももっとハードルは高いでしょうね。

昔ですけど、リードを振り回してて犬の目に当たり
角膜に傷がついたという事で来院した家族がありました。
当然点眼薬を処方するわけですが、飼い主家族は開口一番

「できません」

その理由は、犬が嫌がることはしたくない、とのこと。
正直、その理由は私には理解できません。
病気や怪我の治療は、人間であれば自ら病院に行くわけですが
動物は自らという事は絶対にありません。
だから病院内で我々が動物に対して行う処置はすべて
動物側からすれば「絶対にいや」なことです。
ついでに言うならシャンプーだってそうでしょうし。

治療はすべからく苦痛を伴います。
痛くない治療法があるならもちろんそれを選択しますけど
現実にはそんなものはないでしょう。

嫌なことなんだけどそれはしなくてはならないこと
それは我慢してやらなくちゃね、という事を教えるのが躾でしょうし
そうすることで不利益があるようじゃいけませんが
利になることならばやるべきじゃないでしょうか。

勉強だってそうでしょう。
中には勉強好き、と言う人もいますでしょうけど
ほとんどの人は嫌いなんじゃないですか。
私も決して勉強好きではありません。
でも我慢してそれをすることで自分に利があるわけですから
遊びたいのを、漫画を読みたいのを、テレビを見たいのを
我慢してその時間を勉強時間に当ててるわけです。

嫌なのはわかるけど、ちょっとだけ我慢しておけば
あとが楽ちんになるよ、という事をお互いが理解しなくちゃ
話は前には進まないと思いますが。

話を外耳炎に戻しましょう。
原因となるものに感染症に次いでアレルギーがあると書きました。
アレルギーは皮膚の炎症を起こしますが
耳道で問題となるのは「腫れる」ことです。
その結果、耳道内の狭窄を起こしますので
耳道内に汚れ・膿などが溜まってしまいます。
それらを除去することから治療は始まるわけですが
狭窄しているところからそれらを取り除くとなると
細くなっている通路を無理やりこじ開けなければなりません。
これには痛みが伴いますので急性炎症の場合にはまずは腫れを引かせてからにします。
しかしアレルギー反応が継続して起こっていればいつまで待っても腫れは引きません。

事アレルギーに関しては耳だけではなく全身性のモノでも
飼い主さんの理解と協力が必要なんですが
こちらが一生懸命になっていても飼い主さんの協力がなければ
元の木阿弥になってしまうことが多々あります。
そうなると、最初の話通り

「いつまでたっても治らない」

こういうことになってしまいますね。

病気の治療は獣医師と飼い主さんの二人三脚で行うものです。
お互いの協力なくして治療は上手くいかないです。
そこのところを是非、ご理解いただきたいと思います。

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