岡本動物病院

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院長のブログ

何もなければ何もしない

院長 / つぶやき / 2017.12.9 23:54

個人的には「普通」の事なんですけど。

例えば
「耳を痒がっている」という稟告で診察したら
まず耳の周囲を診て、それから耳の中を診ます。
外耳介皮膚にも耳道内にも何もなければ
痒がっているという原因を考えなければなりません。

耳の中の毛が密集していてそれに耳垢が付着している場合や
耳道内の狭窄が原因になっている場合もあります。
毛が密集しているのであればそれを除去しますが
耳道内狭窄については処置はありません。
炎症があれば抗炎症剤を使うでしょうし
感染症があれば抗生剤なりを使うでしょうが
何もなければ何もしません。
そもそも何もないという事は「痒い」と言う症状ではないからです。
にもかかわらず何かしらの薬を使うのは
間違いだろうと思います。

昔、大学時代の後輩と電話で話をした際に
「から揚げを食べて下痢をしたという犬の飼い主さんから電話があったらなんて言う?」
そう聞いたところ
「(治らないうちに)連れて来てください」と答えますという返事でした。
そうなんです。
原因が明らかな場合にはその下痢が一過性であることがわかりますので
基本的には処置は必要ないです。
なぜなら「病気ではない」からですね。
もちろん下痢が続くようであれば話が違いますよ。

昔々、ある獣医からは
「下痢で来院があったら、まずは『検便』と『血液検査』を行う。
そして何らかの異常値があったら(下痢とは無関係と思われても)
レントゲン検査を行う」と聞かされたことがありました。
その当時はまだ純粋(?)でしたので深読みをして

『そうか 万一の可能性を考えなきゃいけないからなぁ』

経験を積んでくるとこの教えに矛盾を感じてきました。
下痢であれ嘔吐であれ、まずは「心当たりはないですか?」と聞くべきでは?と。

例えば人で「夕食後お腹が痛くなった」と言う場合
どんな痛みか?
食事の内容は?
など問診をしっかり取りますでしょう。
その中でイカやサバの刺身を食べたという話があったなら
アニサキスを疑うのは当然です。
そうすると血液検査よりも内視鏡が優先されますわね。

かつて犬でもアニサキスの感染症例が来たことがありました。
食事を食べないという事で他院を受診し
血液検査からレントゲン検査そして造影検査までしたけれど
原因がわからず、注射処置をされたけれど
不安だから、ということで来られました。

私としてはそこまで検査して原因がわからないという事ですから
ウチでも検査のしようがないなぁと思いつつも
「何か心当たりないですか?」と聞いてみました。
何時から食べなくなったのか?
それは急になのか、徐々になのか?
いつもはどんなものを食べさせているのか?
様子がおかしくなった直前に何を食べたのか?
色々時間をかけて聞き取りをしていたところ
犬がゲボッと嘔吐したんです。
おそらくバリウムだと思いますが、白い造影剤とともに出てきたものを見てみると
アニサキスがおりました。
聞き取りの中で「蒸鮨」を与えていたことがわかってましたので
このアニサキスが原因だというのはすぐにわかりました。
よって私は「何もせず犬を治した」と飼い主さんが言うに至り
『名医』認定されました(笑)。

何もしてないんですけどね。

何らかの症状を訴えて来院されるわけですが
その時点が診察のスタートではないんです。
具合が悪くなる直前もしくはちょっと前からの状態を把握する必要があるので
時間を遡っていかねばなりません。

ちょうど成績の悪い子の勉強を教えるにあたって
どの学年レベルの問題からわからなくなっているのかを
遡って調べないとダメなのと同じです。
学生時代、家庭教師のバイトをしてましたが
担当する子に最初に確認するのは常でした。
原因がわからないと直しようがないですから。
ちなみに・・・成績で言うと小学3,4年で習う
割り算のひっ算で躓く子が多かったですね。
これは私自身も経験がありますよ。
ちょうどひっ算を授業で習う日に風邪ひいて学校を休んでしまい
翌日の算数の授業がさっぱりわかんなかったですから。
周りはドンドン問題を解いていくのに一人だけ異邦人状態でした。
幸い、それをそのままにせずその日のうちに家で習得しましたから
その後躓くことはなかったですけどね。

体内トラブルも同じことで
過去にさかのぼって考えていくというのが診察の基本だと思ってますから
飼い主さんに色々質問をしていきます。
そうすることでどこに問題がありそうだなと言うあたりが付きますから
無駄な検査や投薬をせずに治療が出来ますから。

何も考えてないと「とりあえず」という事で
ステロイド剤を使ってしまう輩が多いですけど
ステロイド剤を安易に使うのは無責任です。
ステロイド剤でなければ治療が出来ない疾患はありますが
ステロイド剤でなくても治療が出来る疾患の方が圧倒的に多いです。

アメリカではステロイド剤の投薬は「1日おき」が原則だそうで
日本のように「毎日」とはしないと聞いてます。
またステロイド剤入りの軟膏などを使う場合には
飼い主に対して「絶対に素手では使わないこと。必ず手袋をするように」と
言わないといけないことになっているとも聞きました。
これはステロイド剤が皮膚から吸収されるため
長期間使用で人体にも悪影響が出る可能性があるからですね。
特に妊娠中の方には絶対注意が必要ですから。

治療を必要とするのは疾患・怪我が明らかな時だけで
そうではない時には「経過観察」だけで事足ります。
その見極めが出来ないと「専門家」を名乗っちゃいけません。
金勘定は置いといて、という事も加えておきましょうか。

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