院長 / つぶやき / 2021.12.21 09:34

先日なんとなしに見ていて感心した映像でした。

海外（多分アメリカ）の動画でしたが、
道路わきに動けなくなっている犬を発見し
それを女性が保護した、と言うものでした。

これだけだと、まあそれだけってことになるんですけど
私が感心したのはその犬の捕獲（と言う表現が正しいかどうか）方法です。

犬は横になって頭部は動かせるようで
吠えたり牙をむいて威嚇していましたが
立てないようで、後躯の怪我（多分交通事故）と思われました。

こういう場合保護する際気をつけなければならないのは
保護する側の怪我です。
犬にしてみれば目の前の人間が助けてくれるなんてことは
全く思っていないので、不用意に手を出せば本気で噛まれます。
窮鼠猫を噛むという言葉がありますが、
鼠ではなく犬ですので噛む力は比較になりません。

ただ保護した女性も手馴れているようで
まずはゆっくり近づいてリードをわっか状にして首にかけました。
それからリードを少しずつ短く持って
犬に近づきつつも頭部が自分のほうに向かないように
コントロールしていました。
ただリードをつけただけでは犬の体に触れるのは危険です。

感心したのはココからで、一見包帯のように見える
軟らかそうな紐を持ってきて
それを犬の下顎にまわして口を閉じるように結びました。
それから毛布のようなもので犬の体を覆うようにして抱き上げて車に乗せました。

犬の武器は言うまでも無く「口」です。
これを使えないようにすることで
犬の攻撃を無力化します。
そうすると犬は大人しくなるんですよ。
そして口が開かないのでこちらが噛まれることもありません。
手負いの動物は一心不乱な攻撃を仕掛けることがありますので
口を開けさせなくすると言う動作が出来るのは
ある意味「プロ」です。
嘘だと思ったらやってみてください。
見ているだけだと簡単そうに見えますけど
相当難しいテクニックなんです。

そしてその後そのまま抱き上げるのではなく
毛布で全身をくるんでましたが
どこを怪我しているかわからない状況ですから
体のダメージを受けているであろう部分を
直接触らないことでダメージを最小限にとどめるわけです。

リードや軟らかい紐、そして毛布を持っていたということは
たまたま通りすがりと言うことではなく
専門の方なんだろうと思いますが
その手際のよさは素晴らしいものでした。

日本ではその心配はほぼありませんが
海外では狂犬病があります。
犬を保護したはいいけれどその犬が狂犬病ウイルスを持っていないという保障が
まったくありません。
だから万一にも噛まれるわけにはいかないです。
噛まれて「痛い」だけじゃすまないです。
もしもその動物（今回は犬）が狂犬病ウイルスを持っていたら
噛まれることで感染します。
感染してから発病までにワクチン接種をすればいいんでしょうけど
それが無ければ発病してしまいます。
狂犬病は発病するとほぼ100％の確率で死亡します。

そういう背景を考えると、うかつに動物に手を出すことは出来ないですね。
犬の体のダメージを最小限にし、自分の身を守る技術は
一朝一夕に身につくものじゃありません。
ただ一旦習得してしまえば今回の動画のように
スムーズに動物を保護できる、ということですね。

その手際にただただ感心しながら画面を見ていた、と言うお話でした。

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