院長 / つぶやき / 2022.6.27 21:58

と考えてみました。
前にも書いたような気もしますが。

まず手術の流れについて考えてみましょ。

手術するにあたって器具・道具を準備しておかなければなりません。
手術器具はすべて「滅菌」という処理が必要です。
消毒程度じゃダメです。
滅菌には「オートクレーブ」と言う機械を使いますが
一旦機械に入れると小一時間は使えません。
理由は「熱いから」です。
それから動物に対しての処置を行いますが
昔々は麻酔だけですぐ手術してましたが
今では前処置を必ず行います。
鎮静・鎮痛剤を注射投与して
これが効いてきたら点滴ルートを確保します。
留置針を入れてそれから導入麻酔を注射します。
麻酔が効いてきたら気管挿管をします。
それから手術台で各種モニターのための器具を取り付け
それから患部の剃毛と消毒（こちらは消毒でOKというか生体に滅菌は出来ません）をします。
それがすんだら手洗いをし手術用ガウンと手袋の装着をします。
そして滅菌した手術器具を出して患部に覆布をして
ようやく手術が始まります。
前処置からここまでで大体１５〜20分ぐらいですかね。

手術時間ですが、猫の去勢手術なら３〜4分、避妊手術で２０分程度です。
犬の場合は去勢手術で１５分程度、避妊手術なら２５分程度です。

手術がすんだら麻酔の覚醒を待ちます。
これは個体差があり、すぐに覚める場合、時間がかかる場合がありますが
こちらとしては出来るだけ早く覚醒するよう手術中の麻酔をコントロールしますが
いつも思い通りにはなりません。
目安としては手術終了から挿管した気管チューブが抜けるようになるまで
１０分以内を目指して手術中の麻酔コントロールをします。
気管チューブを抜くことが出来た時点で手術は終了となります。
猫の去勢手術は時間が非常に短いので挿管はしませんし
また麻酔の維持も上記のものとは違いますけど。

１件の手術が終わって、次の手術となると
器具は新しいものが必要ですし、ガウンと手袋も新しくします。
手術用ガウンも当然ですが滅菌してあるものを使います。

うちにはオートクレーブが２台とガス滅菌機があります。
ガス滅菌の場合はガス注入から加温機に入れて一定時間が経過しないと使えませんので
大体前日までのところで使うべきものすべてを準備しておかなければなりませんので
１日にたくさん手術するという場合には前日どころかもっと前から準備しておかなければなりません。
非常に手間です。

手術日には大体２件程度手術をすることが多いんですが
２件分の準備を前日にしておくことが多いんですが
例えば胆嚢摘出手術の場合だと同じ器具をもう一度使うので
１件終わったところで洗って超音波洗浄をかけて
水気をふき取ってからオートクレーブへとなりますので
次に使えるまで１時間以上待たねばなりません。

避妊手術や去勢手術の場合はうちの場合は手術器具も多くあるので
手術セットとして前もって準備できますが
それでも避妊手術用なら３件分ぐらいが限度ですね。
そうすると１件終わってから使った器具をもう一度オートクレーブまで入れておかないと
３件以上は出来ないということになります。

仮に手術器具を滅菌せず消毒だけで済ませるのであれば
水で洗って消毒薬に漬け込むだけですから
時間はものすごく短縮できますけど
これはやっちゃダメ、絶対にダメです。
消毒は薬品を使いますからこれを体内に入れること自体が絶対にダメですから
消毒に付けた後それを洗い流す必要があるので
どうしてもその後滅菌処理をしなければダメです。

そうこう考えていると丸１日頑張ったとしても
避妊手術なら１０件は、当院では無理ですね。
時間だけで考えてみても。

それに人間のすることですから途中で絶対に疲れてきます。
特に手術時にはライトの光の強さが目のダメージが大きいんです。
それに血の色、赤い色を見ていると非常に疲れます。
赤は警戒色ですからそれを見続けていると相当目にダメージが残ります。

手術を流れ作業的にする、としても
私が万全でやれるのは１日でもせいぜい４〜５件ぐらいじゃないでしょうか。
もちろんそんなことしたことありませんけどね。

仮に人間の疲労を無視したとしても器具の滅菌に時間がかかるので
次から次へというわけにはいかないです。
最も私にとっては間の滅菌処理時間がいい休憩時間になるんですけど。

実際に水曜と金曜の手術日に３件こなすこともあるんですが
３件目が終わると完全に燃え尽きてますよ。
後片付けすら億劫ですし、あまり疲れすぎると夜寝られないんですよ。
警戒色を見続けているせいもあるんですけど
興奮状態が続くんですね。
交感神経が絶好調に作動しているんで
疲れているけれど寝られない、というジレンマに陥ります。


ということで私には１日に何件も手術するだけの
体力はない、ということですけど
まあ仕方ないでしょう。

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