院長 / つぶやき / 2022.7.20 22:34

多分間違いないですね。

よく聞くのが

「胆嚢のエコー検査では胆泥だけでした」
とか
「胆嚢には異常がありませんでした」
などなど。

少なくとも犬の場合は、加齢によって胆嚢内に胆泥がたまってきます。
そしてここからが問題なんですけども
「エコー検査で見えたもの」を胆泥と称するのは間違いではないです。
では臨床症状との関係性はどうなんでしょう？というところです。

以前大阪や岡山、広島で講演をした際に
「胆泥と称するのは構いません。ただし胆嚢管のところまでしっかり見てください」
という話をしました。

胆嚢内に白く見えるものがあれば「胆泥」ですが
厳密にいえばその胆泥が流動性があるものなのか
固着しているものなのか、で話は違ってきます。
また白く見えるものが均一なのか
濃淡があるものなのか、でも全く違います。

そして胆嚢管の部分にまで白いものが見えているのかどうかは
臨床症状と密に関係があります。
この部分まで白いものがある場合は
必ず「疼痛」があるはずです。
疼痛があるとすれば、例えば食事を食べないということも起こりますし
嘔吐もあるでしょう。
ひいては下痢を起こすこともあります。
他の病気を併発している場合、例えばクッシング症候群があれば
治療薬の効果に悪影響がありますし
糖尿病の場合でもインスリンの効果を妨害します。
また白く見えるものが均一ではなく濃淡がある場合も同様です。
疼痛があります。

治療法についても個人的には内科治療はしていませんが
効果が見られないからなんですが
投薬をする目的は何なんだ？と考えてみても
胆嚢内の白く見える胆泥がなくなれば満点なんですけど
それが内科治療の目的だとすれば
流動性のある胆泥でない限り胆嚢内から消えることはないです。
固着していればそれを溶かさない限り胆嚢から流出することはあり得ませんが
薬で固着物が溶解するなどということはありません。
まして胆石になっていればなおさらです。
固まったものが溶けるわけがないです。

人の方でもそうですけど
胆嚢炎は内科対応ではなく外科対応です。
つまり治療法は外科、つまり手術ということになります。
これは動物でも同じです。

問題は手術のタイミングだけです。
状態が悪化してから手術するのであれば
改善率は下がるでしょう。
まして胆嚢が破裂してからだと危険度は急上昇です。
内科治療ということで長い時間が経過していれば
肝臓との癒着も強くなりますし手術の難易度はグンと上がります。
最近になってようやく「予防的手術」の有用性が言われるようになりました。
つまり軽度あるいは軽症のうちに手術をする場合
死亡率はグンと低くなる、ということです。
考えるまでもなく当たり前のことですけどね。

胆嚢炎は軽々に考えていい疾患ではありません。
感染症併発、時には膵炎を合併することもありますし
胆嚢破裂もあります。
痛みはもちろん、下痢や嘔吐、食欲不振などの
臨床症状も起こします。
また悪化する時には急激に起こることもあります。
ホルモン剤の投与、ホルモン性疾患、食事内容、環境要因など
いろいろなことが合わさってラッシュな経過になることもあります。

そう考えていますから私にとってはとても怖い病気なんですけども
世間の評価はそうではないことが多いようです。

大丈夫かなぁと心配するばかりです。

| comments (2) |