岡本動物病院

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院長のブログ

外科医が不足しているとのこと

院長 / つぶやき / 2024.6.20 17:33

それは一応、獣医療ではなく医療の話ですけど。

先日ネットニュースを見ていると、某日赤病院での医療過誤らしき記事があり
それについてあれこれコメントがありました。
初回の記事ではわからないことだらけだったので何が原因か判然としてませんでしたが
初診の際に診察に当たった研修医が!とだけ。
しかし後日の記事を見るに該当の研修医だけの問題かな?と思われる内容で
病院全体の問題があるんじゃなかろうか、と思いました。
もっとも詳しいことは当事者ではないのでわかりませんけど。

その後別の記事で外科医がいない!ということで
本県江津市の病院のことが書かれていました。
その病院では外科医が居なくなったので手術は引き受けられない、
近隣の病院との連携が必要だ、とのこと。
そしてその記事に関連したコメントとしてなぜ外科医が足りないのか、という点について
あれこれ書かれていましたが、かつて医者の花形と言えば外科医だったと思います。
テレビドラマや漫画の世界でも外科医が主人公というのも多かったんじゃないでしょうか。
しかし現在外科医が足りない要因としてはハードワークであること
訴訟トラブルが多いこと、一人前に育つまで時間がかかることなどなど。

確かに外科は、獣医療でも同じだと思いますが
とにかくリスクを背負わなければならない、ということがありますが
これは答えがすぐに出るから、誤魔化せないということになると思います。

個人的には医療の根幹は「内科」と「外科」が両輪だと思ってます。
医療のことは門外なので、ここではあくまでも獣医療の立場ですが
獣医療、特に私のような個人で開業している場合、内科と外科が両輪であることは先ほど書きました。
片方だけではやっていけない、と思います。

ちょうどいいたとえ話が今日ありました。
症例は雄猫で、主訴は元気食欲なし、ということでした。
検査の結果、病名は急性腎後性腎不全となるんですけど
問題はそれがなぜ起こったか、です。
通常は尿中に結晶や結石が出来てそれが尿道を閉塞して尿が出なくなるというのが多いんですが
本症例は尿道口閉塞がおこってました。
尿道云々じゃないんです。
ペニスの出口の皮膚が癒合してまして、要するにペニスが外に出てこれなくなってました。
一見するとペニスが「ない」状態です。
これじゃあ排尿できません、がいつからこんなことになってたのか。
処置の後に考察してみましたが、多分慢性的な尿道炎があり
自分でずっと舐めていたんでしょうね。
そのうち、尿中に出血もあったでしょうから、舐めすぎて皮膚をきずつけてしまい
それで孔の部分の皮膚が癒合してしまったんじゃないか、と思います。
珍しいですよ。初めて見ました。

それでも処置はしないといけませんのでさてどうしよう、となりますが
私は普段から外科をしてますので、こういう場合は躊躇なく皮膚に切開を入れて
ペニスを露出させようと考えます。
一応、これは応急処置ですけど、皮膚の尿道口だったであろう部位を切開し
何とかペニスを露出させることに成功しましたので
ぎりぎりのところまで切開を広げて尿道にカテーテルを挿入しそれを留置しました。
要するにカテーテル入れっぱなしにするわけですが
この際カテーテルを尿道口の皮膚に縫合するんです。
それによってカテーテルを固定するわけですが
今回は尿道閉塞はしていなかったので処置の目的は切開した部分の再癒合防止です。
本格的にはきちんと手術しなければなりませんが
今日は緊急だったのでそこまではできませんでした。
このまま数日入院としてカテーテルを抜去した後に尿道口が確保できれば大丈夫ですけど
もしまた皮膚が癒合するようであればきちんと手術する予定です。

これって内科治療、つまり薬で治ると思いますか?
適当に注射して誤魔化せることだと思いますか?

尿は3日でなければ命にかかわります。
すぐに排尿路を確保しないとダメです。

このような事例では内科知識と外科技術がないと対応できなかったと思います。
すぐに頭を切り替えるということですね。
ただそれも今の私だからさっさとできたわけですが
20年前、つまり獣医になって10年選手だったころならどうだろうな〜、と思います。

個人的には内科は知識が重要で外科は技術が重要と思ってます。
知識を身につけるには本を読み学会セミナーに参加し沢山の症例を診ることです。
技術を身につけるには本を読み学会セミナーに参加し沢山の症例を執刀することです。

外科の技術レベルは執刀した数に比例します。
もちろんただ手術すればいいということはなく
結果を出してこそ、です。
だから一人前の外科医になるには一朝一夕にはいかないんですね。
若くて天才的な技術を持つ外科医、なんてのは漫画の世界だけです。

獣医療は医療と違ってあれこれな手かせ足かせがありませんので
自分でやろうと思えば何でも出来ます。
思わなければ何もできるようになりません。

内科は奥が深いです。
次々と新しい知見、治療薬などが出てきます。
それについていくのはなかなか大変です。
外科は経験を積む=年を取るということですので
体がついてこなくなります。
これはとても悲しいですね。

それと外科に必要なのは覚悟です。
全ての責任を背負いますから。
リスクと常に隣りあわせです。
それから逃れようと一度でも思ったら
もうメスは握れません。
握っちゃいけません。
そんな風に思いますが、若い世代にもそれは伝えたいですね。
そっぽ向かれるかもしれませんけど。

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