
数年前から問題視しております。
老齢性心臓病である僧帽弁閉鎖不全症についてです。
世界の心臓病専門医が集まって診断基準、病気分類などを決定していますが
治療薬について、病気分類に合わせてマニュアル化されています。
過去30年以上、この疾患における病気分類はちょこちょこと変更されてきまして
まあ、それは専門的なことなので割愛しますが
現在治療薬として挙げられているのが強心剤であるピモベンダンです。
(商品名:ベトメディンとかピモベハートとか)
この薬の効果については疑うことは全くありません、が
これまで使用されてきた血圧調整剤が「無効」であると、いう論文が出てまして
これを受け、国内でもこの薬を無効としてピモベンダンのみで、という風になってきています。
世界のトップの方々が言っているし、論文も出ているし、ということで
それに異論を上げるのは自殺行為かもしれませんが
現場で実際に治療に当たっている獣医師としては
あ〜そうですよね〜とはいきません。
先日もピモベンダンのみ投与されていたという犬が
結局肺水腫を起こしてしまいました。
初診時肺の鬱血が起こっているかな、という程度でしたが
あっという間に肺水腫を起こしました。
欧米と日本ではこの疾患に対する対応が違います。
欧米ではあまり気にしていないようなのですが
「咳」という症状。
これが僧帽弁閉鎖不全症では最初に見られるものです。
この段階でピモベンダンを使ってもいいですが
咳は止まらないことが多いです。
この「咳」に対して日本では「有害事象」として捉えます。
飼主さんも気になるでしょうし、動物自体も「楽」ではないですよ。
この咳の段階では無効とされた血圧調整剤が有効です。
間違いなく。
そしてこの薬を使うことで病態の進行も抑えられます。
これは長年治療に当たった人間として明確に言い切れます。
はい。
無効ではないです。大変有効です。
この薬の投与から始めて、以後症状の進行はゆっくりにはなるものの
ゆっくりとは進行します。
その時々の病態に合わせて薬の選択をしていき
最終的には天寿を全うさせるべく内科治療を継続します。
ピモベンダンももちろん使う時が近い将来やってきますが
その前に血圧調整剤だけで維持できる期間が長くあります。
結局のところ、肺水腫にならないようにすることが
この病気に対する際の心構えと思っています。
肺水腫っていうのは肺に水が溜まる状態ですので
呼吸が出来ません。
わかりやすく言えば陸上にいながらおぼれている状態です。
水を飲んで胃に入っているのであればいいですけど
気管から肺に水が入ってしまう状態と同じです。
どう想像しても苦しいでしょう。
そうならないようにする、というのが大事なことです。
最新の、ってのを否定はしませんが
これまでやってきた歴史を否定するには難しいんじゃないでしょうか。
なにしろ実績がありますから。
それを1枚のペーパーで否定というのはいささか乱暴です。
ということで私はこれまでの治療実績という歴史に
新しい知見を組み込んで、というのが理想的だと思います。
ついでですけど、この時世色々言われますけど
昭和を生きてきた者として、そして令和を生きている者として
昭和を完全否定はしません。
もちろん悪しき慣習は改めるべきですが
温故知新という言葉もありますので
何でもかんでもがダメ、ということにはならないですね。
個人的意見ですけど。
| comments (3) |
返信ありがとうございました。そして、何よりも、転院してから飼い主に寄り添う診療をしていただき、感謝しております。これからも、僧帽弁閉鎖不全症の子達が、穏やかに生活できるよう、お力をお貸しください。大変お世話になりました。ありがとうございました。
周藤 智子 / 2025.12.3 23:08
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周藤さん こんばんは。
先日若い獣医さんと話をする機会がありましたが、やはり論文が先に来るような印象でした。様々な疾患に対する治療法は過去から続いているもの、途中改変されたものなど色々ありますが、歴史を学んでもらうとより良い治療が出来るのにな、と思いました。
今の若い獣医さんたちはよく勉強していると思います。色んな参考書、専門書もありますから。
しかしながら経験という点ではこれから身につけていってほしいものです。
岡本宏之 / 2025.11.26 17:39
| EMAIL | URL | eg.jqFGU |
このブログを何度も読んでいつも思うことは、「アメリカ式の何がいいの?飼い主さん達は喜んでいると思う?泣いてるよ!なんでわからないの?他の医者は!」うちの子も、8月までは元気にお散歩していたのに、坂道の前で立ち止まるようになり、今では部屋の中を歩くだけでハアハア。そしてパタンと倒れる。先生にもっと早く出逢えていたら今も散歩出来ただろうなぁ、と思うと残念でなりません。病気の本人も辛いけど、それを見るのも相当辛い。救ってもらった命、続くといいなぁ…。きっと飼い主さん達はみんな同じ思いだと思います。
周藤 智子 / 2025.11.25 23:22
| EMAIL | URL | waDTeZjQ |