院長 / つぶやき / 2015.4.9 18:58

今回は食事についてです。

科学的に明らかにされている事実が１つあります。
それは「低蛋白・高炭水化物食」の給餌によって、最短で６週間後には胆嚢炎となる、というものです。


では、低蛋白食とはどれぐらいのものなのでしょうか。
一般的な成犬用ドッグフードに含まれるタンパク質は、各メーカーともだいたい20〜30％程度となっています。
例えば100ｇの食事中ならば、20〜30ｇが含まれている、ということになりますね。
『案外少ないね』と思われるかもしれませんが、これに脂肪分やその他の栄養素が含まれますので、決して少なくはないと思いますよ。
この蛋白質、もっと詳しくえば「メチオニン」という成分が少なければ少ないほど胆嚢炎になりやすいと言われています。
メチオニンは必須アミノ酸の１つで、一般的には肉類・魚類には多く含まれており、野菜には少ない物質です。
犬は元々肉食動物ですから、考えてみれば「肉を与える」というのは理にかなってますね。

では、実際に胆嚢炎になってしまったらどんな食事がいいのでしょうか？
先ほどの低蛋白食がダメなのですから、逆を考えればいいのです。つまり「高蛋白食」となります。
しかし、一般のフードでは高蛋白食は往々にして高脂肪食です。
胆嚢炎になると脂肪の消化が不十分になり、その分膵臓への負担が増します。それが急性膵炎の原因の１つと考えています。
ならば、低脂肪食にするべきでは？と考えますね。
そうすると「高蛋白」でありながら「低脂肪食」が良い！となります。

そんな都合のいいフードがあるのでしょうか？

答えは「あります」です。

当院では飼い主さんの金銭的負担を考えて、できるだけ一般食をお勧めしています。
もちろん「処方食」ならばいろいろありますけどね。
一般食、つまり市販されているものの中で「高蛋白・低脂肪食」というのは「肥満犬用」と書かれているものがそれに該当します。
ここのところはメーカーさんにも一言言っとかないといけませんね（ここを見てるかどうかわかりませんが）。
「高蛋白・低脂肪食」は減量用と謳うのはちょっと違うよ、と。
確かに減量効果はあります。
しかし、世のアスリートと言われる方々が食べている食事も「高蛋白低脂肪食」ですね。
極端な例では「ラ○ザップ」というところへ行くと徹底して「高蛋白低脂肪食」を食べるよう指導されています。
体内にたまった余計な脂肪を運動で燃焼し、たるんだ筋肉をバッキバキに作り上げるため、良質の蛋白質を摂取する、というこれはこれで大変理になかってます。

話がずれました。

胆嚢炎の場合、脂肪分解がうまくできなくなった体と言いました。そのため低脂肪と言われるレベルまで落とした食事にすると、そのレベルの脂肪分なら負担なく消化ができる、と考えてください。
それゆえ一般では減量用と言われているフードが、現状の体にピタッとハマるわけで、その結果、体重が元に戻るんですね。
実際に「胆嚢粘液嚢腫」と診断し「手術の適応あり」とした犬で、諸事情で手術をせずに食事を変更するだけ、というものいます。これらの多くは体重が正常範囲に戻り、少なくとも外見上は健康体を維持できています。
ちなみに、低脂肪とはどの程度なのか、といいますと一般食の成犬用がだいたい15〜18％程度ありますので、理想的には10％以下のものですね。多くても13％以下が「低脂肪」だと思います。

これらの数値はフードの裏面に「成分分析表」として記載されています、が！
ひとつご注意。
ほとんどのものが「○○％　以上　or　以下」と書かれています。
例えば「脂肪分　10％　以上」とあれば実際には15％かもしれないし20％かもしれませんね。
正確な分析表を記載して欲しいものですが、それは「乾物量」と表記してあればそこの数字は実際のパーセンテージと考えていいです。
ただ、そこまで正確に書いてあるフードメーカーはなかなかありません。

ということで、話があっちこっ飛びましたが、今日の結論です。

「胆嚢炎にならないためには高蛋白食を与えること」　と
「胆嚢炎になってしまったら高蛋白低脂肪食を与えること」です。

ちなみに当院で治療食としてお勧めしているのは・・・
「Hills　ライト」もしくは「シニアライト」です。
結果はきちんと出ます。

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