不老不死は不可能ですが。
体の老化は、学術的には細胞の老化です。
それまではきちんとしたリズムで新陳代謝が繰り返されていたのが
様々な原因でそのリズムが崩れてしまい
新しい細胞が生まれなくなってそのまま細胞が死滅していきます。
細胞の老化では酸化が問題になります。
老化対策として「抗酸化物」が重要であるというのは有名な事実ですが
これを臨床応用すると細胞の老化が防げるのではないかと考えるのは必然です。
抗酸化物は様々なものが知られています。
それをある時期から定期的に摂取すれば理想なんでしょうが
見た目に何ら異常が見られない時に与え続けることが現実的でしょうか。
例えば老齢性心臓疾患の代表である、犬の僧帽弁閉鎖不全症では
検査で発見で来たらただちに投薬治療を始めます。
そのまま定期的に診察を受ける人が圧倒的に多いんですが
中には途中リタイアする人もいます。
投薬が出来なければ病気の進行を抑えることが出来ませんので
悪化の一途をたどるわけです、
最終的には肺水腫を起こして呼吸不全を併発し死に至るわけで
そのことは重々説明をしているはずなんですけど
見た目が元気なのでリタイアしてしまうんでしょう。
確実に体の中に病的異常があることは動かしようがない事実です。
頭ではわかるけれど心情的には・・・と言う人の話を聞いてみると
薬を飲ませること自体に抵抗があるようです。
犬が薬を飲むのを嫌がる。
これを一番多く耳にしますが、仮に嫌がったとしても
薬を与えなければどうにもならないですね。
何とかして飲ませたいと思うのは我々獣医師だけではなく
薬を製造しているメーカーも頑張っています。
本来薬は食べ物ではありませんが、それでも出来るだけ「おいしく」感じるように
犬が好む風味をつけたり、錠剤の形を工夫したりしています。
これは人体薬ではあまり見られないものですが
動物薬では多くのものにこういった工夫がなされています。
薬のメーカーは、製品を作ってそれを売ることで利益を出すわけですが
営業の人間は、病気の動物を救いたいと考えている人が多いんですよ。
営業の人間って純粋な人間が多いんですよ。
飼い主さんは見た目が気になる所でしょう。
我々獣医師は中身が気になるんです。
体の外側の異常は見ただけでわかりますが
体の内側の異常は見ただけではわからないことが多いんです。
細胞の酸化による老化となると全くわからないです。
でも検査をすればどこにどんな異常が起こっているかはわかります。
出来れば治したい。
でも治せないことが多いのもこれまた事実です。
元気だけではなく健康に
そして長生きしてもらいたい。
そうすれば飼い主さんもうれしいでしょう。
それに関わっている獣医師もうれしいんですよ。
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