岡本動物病院

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院長のブログ

ゴールドスタンダード

院長 / つぶやき / 2017.11.8 20:36

まずは基本をきちんと習得してから、という事です。

診断でも処方でも手術でも、なんでもそうなんですが
特に手術に関して、基本的手技を身に着けないととんでもないことになります。

避妊手術では
子宮卵巣すべてを摘出するのが基本です。
しかし別の方法として卵巣だけを取る、子宮だけを取る
あるいは卵管を結紮するというものあります。
どの方法で手術をするにせよ、一番大事なのは結紮です。
結紮とは糸で結ぶ行為を指しますが
これがきちんとできていないと後出血が起こることがあります。

昔、他の病院で子宮卵巣全摘出を受けたという犬が
手術直後から体調が悪いという事で転院されてきました。
結局、卵巣の結紮が不十分であり後出血を起こして
それが癒着の元となり小腸の一部が腹膜に完全癒着をしてしまい
腸閉塞を起こしていました。
当然のことながら再手術となり、癒着していた小腸を切ってつなぐ羽目になりました。

膀胱切開では
膀胱結石の摘出時に行う手術ですが
古いテキストには「膀胱の背側を切開する」と書かれています。
しかしこの方法は間違っており、膀胱の腹側を切開するのが普通です。
膀胱の背側切開はお腹を開けたのち、膀胱を反転しなければならず
非常にやりにくいのです。
また切開部位がきちんと真ん中でないと、両脇には精管・血管・尿管がありますので
それらを傷つける危険性があります。
それゆえこの部位を切開するのは間違いなのです。

しかしこの膀胱背側切開を「やられてしまった」犬がいました。
お腹を開けてみると案の定、真ん中を切っておらず
片方の尿管に近い部分を切ったためその尿管の閉塞を起こしてしまいました。
尿管が閉塞するという事は腎臓で作られた尿が流れなくなるという事ですので
結局、腎臓内に尿が溜まり「水腎症」と言う病気になってしまいました。
こうなると腎臓はもはや「死亡」ですので、腎臓摘出を行う羽目になってしまいました。
正しい方法で行われていれば腎臓を失うことはなかったはずなんですが・・・

骨折手術では
「折れた骨を正常な位置に戻し、なおかつ強固に固定する」と言うのが常識です。
そのための方法として、ピンニング・プレーティング・創外固定・インターロッキングなどがあります。
一般的にはピンニングかプレーティングだと思いますが
ピンニングの場合、それだけでは固定力が弱いのでギプスなどの外固定が必要となります。
ピンニングでもプレーティングでも同じことなんですが
使用する器具(ピン・プレート・スクリュー)はどの骨に使用するかということと
体重はどれぐらいあるか、によって使うもののサイズが変わります。
例えばチワワの前足に使うピンと、レトリバーの前足に使うピンが同じサイズのわけがないですね。
それゆえ使用する器具の選択を誤ると、ピンにせよプレートにせよ破綻します。
特にピンの場合は、骨の中に挿入して「芯棒」として使いますので
どうしても骨よりも細いサイズになりますから、だから外固定の併用が必要なんです。
これを怠ると、あるいは外固定がきちんとできないとピンは折れてしまいます。
ピンが折れたら再手術となるんですが、骨の中に残っているピンを抜き取らないといけないんですが
以前他の病院でこれをやられてしまい、現在も骨の中にピンの破片が残っている犬がいます。
手術した骨自体は変形癒合をしていますが、幸い日常生活に支障はないようなので
今のところそのままにしていますが、異物を骨の中に残したままで良いわけがありませんので
今後、不都合が見られたらピンを抜いて再手術しましょう、と飼い主さんには話しています。

手術に使う縫合糸は
皮膚を縫合する場合はナイロン糸がステープラー(外科用ホッチキス)を使います。
しかし内臓や筋肉を縫合する場合には「溶ける糸」を使います。
さらに内臓の場合には「モノフィラメント」と言うものを使います。
溶ける糸なら何でもいいわけではないんです。
また内臓の縫合に溶けない糸を使うのは非常識です。
筋肉縫合の場合は、100歩譲って溶ける糸でなくてもいいとされていますが
個人的には「ありえない」と思います。
昔々で糸の種類が限られていた時代ならいざ知らず
今は多種多様なものが簡単に入手できる時代ですので
わざわざ溶けない糸を使う理由がありません。
さらに最近の犬では、特にM ダックスは、糸に対して強烈な異物反応を示すものが多くなりました。
多くは溶けない糸、特に絹糸に多いんですが
M ダックスの中には溶ける糸ですら拒絶反応を示すものがいます。
なのでM ダックスの手術の際には絶対に絹糸は使ってはならないとまで言われています。

薬の処方では
特にステロイド剤ですが、獣医はこれを安易に使いすぎると思います。
一時週刊誌にも掲載されていましたが「悪徳獣医はステロイドを使う」とありました。
かなり過激だなとは思いましたが、さほど外れてもいませんね。
ステロイド剤は『魔法の薬』です。
腫れ・痒み・熱をあっという間に解消します。
食欲も出ます。
ただしこれは薬による一時的なものですから
薬の効果が切れれば当然元に戻ります。
だからまたステロイドを処方するという負のスパイラスに突入します。
ステロイド剤は副作用が出やすい薬で有名なはずなんですが
週刊誌によると、「悪徳獣医」は治すことが目的ではないので
ステロイドをどんな病気でも処方する、と書かれていたんですよ。
ステロイドの長期乱用によって副作用が出た場合
それを処方した獣医には治せませんので
同じ病院に通ってても悪くなる一方で、いよいよとなって転院しても
すでに時遅し、という事も多々あります。
ステロイドを使っていいのは、この薬がこの病気の治療に有効であるという場合だけです。
つまりきちんとした診断がついてから、なんですね。
なんだかよくわかんないんだけどとりあえずステロイド使っとくか、と言う処方をしてはダメという事です。

世の中にはルールがあり、常識があります。
時代とともにこれらは変化することもありますが
根底の部分、つまり原則はそう変わらないと思います。
それこそがスタンダードという事なんだろうと思います。
それを無視して好き勝手に行動するのは
少なくとも正しいとは言えませんし、時に「悪」となります。
すべての物事には理由がある、と誰かが言ってましたが
まさにその通りだと思います。

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