今日はちょっと問題発言かもしれませんが「胆嚢炎 薬で治るのか?」です。
世に誤解が非常に多いのが気になるわけです。
最も多いのが
「血液検査でALPやALPに異常があった。エコーで見たら胆嚢に胆泥があった」
これなんです。
胆嚢炎の診断に血液検査は有用ではありません。
教科書には「胆嚢炎が悪化すると肝臓や胆管に影響を及ぼしてALP・ALTの上昇を見ることがある」と書かれています。
この表記を見て「胆嚢炎の時にはALPやALTが上昇するんだ」というのは文章の読解力に難ありといわざるを得ませんが・・・獣医学は理系なので文系が苦手な人が多いのかもしれません。
冗談はさておき。
胆嚢と肝臓は別の臓器ですのでALPやALTの上昇があって胆嚢内に胆泥があったというのは「たまたま」なんです。必然性も関係性もほぼありません。
よって「胆嚢炎の診断にはエコー検査が有用であり、その画像をもって重症度などの判別を行う」というのが正しいわけです。
もっとも血液検査も「全体の評価」としては必要な検査ではありますが。
それともう1つ。
胆嚢炎の内科的治療ですが、ウルソデオキシコール酸という薬を使うことが「常識」となっているようですが、果たしてこれで「治るのか?」という問題について。
まず、ウルソデオキシコール酸は「胆嚢に直接効果はない」と断言しておきましょう。
ただ、まったく効果が無いというわけでもない場合がありますが、それは「間接的な効果」によって効いたということです。
しかもウルソデオキシコール酸で効果があった場合、薬の投与は基本「生涯投与」となります。
では「効果があった」とはどういう状態を指して言うのか、について。
これは「胆嚢内の胆泥の量が減った、あるいは無くなった」という状態のことです。
当院でもかつては内科治療を積極的に行っていた時期があります。
文献的には「効果のある症例は30%」と言われており、実際当院でもその程度の数値でした。しかも投薬を止めると全例が再発し、しかも最初の状態よりも悪くなっていました。
そして効果のあった30%の症例も最終的には手術となりました。
これはどういうことか?と言いますと、投薬で期待できるのは「胆泥の減少」と「体調の維持」です。胆嚢の病態進行に歯止めが利くと言うことではないんです。
ですので投薬を続けていても胆嚢炎は徐々に進行していき、結局は手術と言うことになるんです。
当院では投薬を行う場合には病態の基準を持っています。
まず「胆泥」であること。そしてそれが流動性のあるものに限ります。
投薬期間は3ヶ月とし、エコー検査で胆嚢の状態を確認すること。
エコー検査の結果「胆泥量の減少あるいは変化なし」であればそのまま継続してもよし。
ただし「胆泥量の増加・粘液嚢腫への移行がある」場合には投薬は終了し手術を検討する。
このようにしています。
胆嚢炎も実は複雑な病態があります。
胆嚢内部の「胆泥」や「粘液嚢腫」あるいは「胆石」だけ目がいきがちですが、粘膜の状態や肝臓との癒着を考えなければなりません。
例えば胆泥はほとんど無いけれど内部では出血がある「出血性胆嚢炎」と言うのもあります。
胆嚢ポリープは結構多く見られます。
肝臓との好個な癒着と言うのもあります。
これらはすべて手術でなければ治すことが出来ません。
残念ですが薬で治す病気ではなく、内科治療では「状態(体全体)の維持」が目的になります。
完治の方法は外科的に切除するしかないんです。
後はそのタイミングを見誤らないことが重要です。
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