岡本動物病院

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院長のブログ

抗生物質

院長 / つぶやき / 2018.3.18 23:16

何でもいいというわけではありません

抗生物質は「細菌感染」に対する治療薬であることが大前提です。
寄生虫やウイルス感染には全く効果はありません。
それをより効率よく使うためには高等な学問レベルで言うならば
感染している細菌の種類を特定することと
どの抗生物質が効果があるかを特定することとなります。

前者は「同定」と言い
後者は「感受性試験」と言います。

しかし通常これらの検査をルーチンに行うことはないでしょう。
理由は「時間」と「手間」と「費用」が掛かるためです。
二次診療施設ならいざ知らず、一時診療ではほとんどやりません。
ただ実施することは可能です。
一部の開業医でも行っているようですが私はやってないです。

ではどうやって抗生物質の種類を決めているか。
これは「確率論」と「経験論」です。

例えば皮膚病であれば感染を起こしている細菌の種類はほぼ決まっています。
それに効果的な抗生物質もわかっていますので
第一選択薬も決まっており、それを投与してみて
効果がなければ別の抗生物質に切り替える、と言う風に治療します。

時に、重症な感染が疑われる場合には
2種類の抗生物質を併用することがあります。

ただ併用時には注意が必要で
組み合わせてはいけないものがあります。

昔の事ですが私が診察して治療を行っていた猫で
元々が咬傷でしたので治療は簡単だったはずなんですが
2日ほど留守をしている間、別の獣医がその猫の治療を起こっており
3日目に猫を診察する機会があり、もう治っているだろうと思ってたら
全くよくなっておらず、というより初診時よりも悪くなっていました。
何があったのかよくわからなかったのでカルテを読み直してみると
絶対に組み合わせてはならない抗生物質が使われていました。
そのことを私の留守の間に診察した獣医に確認したところ
私の処方を無視して、自分勝手に行っていたことがわかりました。
また組み合わせに関しては知らなかったとのこと。
呆れると同時に頭に来ましたね。
そもそもの主治医の処置を無視して自分勝手にしたことと
薬の事を何も知らずに治療を行っていたこと
この2点で頭に来ました。

また組み合わせることで相乗効果が出るものもあります。
つまり1+1=2ではなく1+1=3になるという事です。
これを使う場合は、例えば胆嚢摘出手術後とか
他院からの転院事例や難治性の症例です。

組み合わせも大事なんですが、もう1つ大事なのが投薬期間です。

これも昔話ですが、他院で膀胱結石の手術を手術を受けたという犬でした。
わずか2週間前に摘出手術を受けたにも関わらず当院来院時にはまた結石が出来ていました。
そもそもの結石が細菌感染が原因で出来るタイプの結石だったため
容易に再発したという事になるんですが、これは抗生物質の投与を考慮すれば治療できたはずです。

細菌性膀胱炎の場合には短期間投与では効果が期待できません。
最低でも2週間、通常は1か月間継続投与します。
これは簡単な理由で、動物の場合、抗生物質を投与しても膀胱内に薬が十分に移行しないため
効果が出にくいんです。
そのため長期間投与を行って膀胱内に薬の成分を移行させる必要があるんです。

また前立腺疾患の場合は薬の種類選択が非常に重要です。
これも膀胱と同じ理屈なんですが、前立腺は脂肪が多い組織なので
脂肪に移行しやすく溶け込みやすい抗生物質でなければなりません。
それゆえ例えば皮膚病で使うタイプのものでは効果が期待できません。

これらは学術的かつ確率論、そして経験論からのもので
同定や感受性試験を行わずとも出来ることです。

教科書を読んだだけでは不十分ですし
経験はとても大事です。

過去の経験には失敗もありますが
それを忘れず反省をすることで
経験を積むという事になり
今後の治療が速やかに良好な結果となっていくのです。

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