院長 / つぶやき / 2018.4.26 10:50

個人的には当たり前のことだと思ってますけどね

飼い主さんから聞かされて「へぇ？」と変な関心をしてしまった出来事です。

1：耳の中を見る

『耳を痒がる』ということで来院されるわけですから
当然、中がどうなっているかを見なければいけません。
しかし耳の中を見ることなく「はい　この薬を入れて」とだけ言われ
そのまま点耳薬を続けていたけれど治らない、と言うことでした。

耳の中を見ずに薬を処方する

こんなことがあるんだ、と変な関心をしてしまったわけです。
私などは耳の中を見る器具を探しまくって
手元には5種類の器具がありますが
いまだに納得がいかずまだ探索中なんですけど。

耳の中を見ずに外耳炎の治療と言うのは
個人的には「法律違反じゃないの」と思います。
なぜならそんなことは獣医じゃなくても誰でも出来ますから。

獣医は診察をしてから診断をして、それから治療に入るものです。
診察と言うことの中に「耳の中（患部）を見る」と言うことが最初にあるわけで
検査などはその「後」に行うものです。

2：口の中を見る
口臭があるとか顔が腫れているとか
よだれがでるとかそういう場合には
口腔内に病変があるかどうか確認します。
そのためには口を開けてみるのが一番ですが
それが難しければ唇をめくってみるなどして確認します。

しかし口を見ない獣医がたくさんいるよ、と飼い主さんから聞かされて
これまた「へぇ？そうなんだ」と変な関心をしました。

口の中を見ないというのは多分・・・
「噛まれたくない」と言う心理からだろうなぁと想像しますけど
口の中を噛まれずに見る方法なんていくらでもあります。
まず単純に口を開けてみると言う方法ですが
これは簡単なようで実はかなり高度なテクニックを要します。
コツは「恐れないこと」と動物を「恐れさせないこと」です。

それが難しい、というのなら鎮静剤を使えばいいんです。
鎮静処置と言うのは診察する側はもちろんですけど
動物側の危険を避けるための処置でもあります。

例えば骨折している足のレントゲンを撮る場合
専門医は必ず「麻酔をしてから」撮ります。
骨折しているわけですから当然痛いんです。
その足を引っ張ってレントゲンを撮るんですからもっと痛くなります。
そこで暴れると折れた骨で周りの血管、神経、筋肉を傷つける可能性がありますので
それを防ぐために痛みを飛ばしてから検査したほうがいいんです。

口の中を見る場合も同じですし耳を見る場合も同じですね。

特に口の中についてはきちんと見ておかないと
後々大きな病気を起こす可能性があります。

歯周病から心臓病あるいは腎臓病というのは
もはや常識的なことではないでしょうか。
もしご存じない方は「へぇ　そうなんだ」と感心してください（笑）。

「見る」と言うのは我々は「診る」と言います。
診察の基本である「視診・聴診・触診」の3つのうち
一番最初にするべきことです。
患部を見ずして診断はつきません。
診断がつかない状態では治療も出来ません。
これが普通です。

しかしそれをしない獣医がいると聞かされて
なんとも情けない気分になりましたが
基本が出来ない獣医には応用は不可能です。
正しく診察・診断・治療のためには
初診に戻り「基本」からやり直さなければダメですね。
色んな検査はその後でいいんですから。

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