岡本動物病院

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院長のブログ

歯周病と腎臓病

院長 / つぶやき / 2018.7.5 10:44

猫ではエビデンスがある話ですが個人的には
犬でも猫と同様だと思ってます。

猫の場合、歯周病が悪化することで回りまわって腎臓病が起こるあるいは進行するというのはよく知られた事実です。

猫の慢性腎臓病については色々な研究がなされているようで
腎臓病の診断方法、治療方法あるいは有効なサプリメントなど
様々なものが世に出ています。

これに対して犬の腎臓病については20年前と比べて
大きな変化がないように感じています。

ただきっと世界のどこかで、今も犬の腎臓病についての
研究は継続されているものだと思いますが。

猫の腎臓病の悪化要因の1つに歯周病があります。
個人的な感想とこれまでの経験からですが
犬でも同じように歯周病と腎臓病の関連は「ある」と思ってます。

また、これまた個人的な経験則からの考えですけど
犬の歯周病の方が猫よりも重症なことが多いです。

例えば歯石の付着量をとっても犬では、これでもかぁ〜と付着していること多いですが
猫ではそこまで大量のものは付着しません。
また歯根部の壊死やついでに顎の骨の壊死を伴うような重篤なものも犬では頻繁に診ます。

高齢になって歯周病の悪化もあるし、内臓疾患もあるし、と言う状況になって
現在の問題、例えば「食欲不振」がいずれのことが原因なのか
単独なのか、併用なのかを区別するに苦慮することが多々あります。
1つずつ問題を解決できればいいんでしょうがこれには飼い主さんの協力が無いとできません。

一般的なものがどうなっているかわかりませんが
少なくとも当院では飼い主さんのほうから歯の処置をお願いされるケースは多くはありません。
ほとんどがこちらからの提案です。

これには、まず飼い主さんが歯周病について知らないと言うことが大きな要因でしょう。
ただ歯周病だけに限ったことではなく、病気について知らない、と言う人が圧倒的ですから
特に飼い主さんの責任だとは思いません。
私がよく口にするのは「人間も動物も同じだよ」ということです。

例えば歯周病についていえば、テレビのCMでもやってますけど
『日本人の70%が歯周病である』
これが事実だとすれば考えなきゃいけないことが出てきます。

多くの人は毎日歯磨きしているはずですが
それでも歯周病になると言うこと。
歯周病患者が全人口の70%と言うことは
日本人が1億人いるとして7000万人の人が罹患患者であると言うこと。
そして7000万人の人すべてが歯科医で治療を、おそくらは、受けていないであろうということ。

そう考えていくと、犬猫の歯周病はどうなんだろう?と思うわけですが
歯周病の罹患率はおそらく100%でしょう。
そしてそれは年齢が上がると共に増えてくるはずです。
人の場合でも歯磨きを励行していても70%が歯周病になるのであれば
動物に歯磨きをするよう指導するのは正しいことなんだろうか、という疑問があります。

個人的には動物の歯磨きを毎日励行するというのは「無理だろう」と思ってます。
これは動物側の協力というか慣れというか、諦めと言うか・・・
それプラス、飼い主さんの強固な意志がないと毎日続けることは
少なくとも私には無理ですね。

では歯周病に対してどうすればいいか、なんですが
これは歯を守るということだけではなく、顎の骨をも守り
そして呼吸器感染症や内臓疾患をも守るという意味がありますから
きちんと、そして徹底して処置をすることだろうと思います。
それは病院で処置を行うことになるわけですが
歯の処置を行う場合には麻酔をかけます。
人の場合と違って局所麻酔では不可能ですから
当然全身麻酔と言うことになりますが、これは通常の手術の場合とまったく同じです。
避妊手術であれ骨折手術であれ胆嚢摘出手術であれ
歯の処置を行う際にはまったく同じ手順で麻酔をします。

よく「全身麻酔は怖い」と言う人もいますけど
過去に避妊手術や去勢手術を受けたことがある人は
その手術の時にも全身麻酔をかけているんだよ、と言うことを忘れてはいけません。
避妊手術や去勢手術だって100%安全ということではないですから。

歯の処置に麻酔を使用する目的は「不動化」と「疼痛管理」です。
動物はそもそも口を開けたままにはしませんのが
処置の間中口を開けさせておかねばなりません。
またスケーラーで歯石を歯周ポケットからとる作業も
当然抜歯も痛みを伴いますからこれらを抑えてやらないといけませんね。
つまり「安全に処置を行うために」麻酔は必要なんです。

歯の処置も手術と考えてください。
だから麻酔が必要なんです。
単に歯を綺麗にしているだけではなく
他の病気を未然に防ぐ意味もあるんです。

犬の場合、重度な場合が多いんですが
歯石取り、ポリッシング(磨き)のほか、抜歯、腐肉・腐骨除去などのトリミング、縫合など
これらの作業を行うわけですが、かかる時間としては
平均すると前半部分だけだと、猫では15〜20分、犬では30分程度掛かりますし
後半部分も含めて全工程を行うと、猫では30〜40分、犬では60分以上掛かります。
つまり歯石除去・磨きだけと比べると重症化している場合には2倍以上の時間が掛かります。
そうなると当然ですけど掛かる費用も多くなります。

もしも犬の場合も猫同様、歯周病と腎臓病との因果関係が明確になれば
そしてその情報が周知徹底されれば今よりも歯の処置を行う飼い主さんは多くなるかもしれません。
しかし、現時点では明確になっていなくても、私は関連がある、と思っていますので
当院では積極的に、きちんとした歯の処置を、飼い主さんに勧めています。
健康長生きのためにはきっと必要な処置、というか体のメンテナンスの1つだと思ってますから。

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