院長 / つぶやき / 2018.9.10 08:27

これは経験した人でないとわからないでしょう。

とは言え、幸い私は経験ありません。
しかし友人で救急車に運ばれた者もいますし
見舞に行った際、色々とその時の状況を聞きました。

芸能人の場合にはニュースになるのでその記事を目に耳にすることがあるわけで
先だっては所ジョージさんが緊急入院から胆嚢摘出手術を受けたようです。
その記事も見ましたが相当な痛みがあったのはよく伝わってきます。

こういう「痛み」に関しては、医者はよく知っていることだと思います。
それは胆嚢炎の患者を数多く見てきてそして治療経験があるからでしょう。
これに対して獣医師はこの痛みがよくわかってないんだろうなと思わざるを得ません。

当院で手術の必要あり、と診断したもののセカンドオピニオンということで
他院の診察を受け「手術の必要なし」と言われたが、と言うことがたまにあります。
そういう場合、私には手術する必然性がわかっていますので
他院の診断を鵜呑みにはしませんが、最終的に手術するか否かは飼い主さんが決めることなので
特に反論もしません。

ただ先ほど書いたように
どれだけの症例を診て、治療・手術をしてきたか、と言う経験が
多い獣医師と少ない獣医とでは正答率はおのずと異なってきます。
結論から言えば「痛み」を訴えているからこそ手術の適応ありと判断しているわけですから
痛みの原因を取らない限り、例えば鎮痛剤をつかったところで
あくまでもそれは姑息的手段にすぎず、動物は痛みを抱えながら生活していかねばならないわけです。
痛みを抱えて我慢しているということは、肉体的ストレスを抱えているということですので
身体のホルモンバランスが崩れてきますし
また胆嚢炎から感染症を合併すればより悪化していきますので
最悪、膵炎の合併を起こしてしまえばもはや手術にはなりません。

手術しなければならない状態かどうかは
熟練の獣医師にしか判断できないことで
経験の浅い獣医の場合にはなかなか難しいんじゃないでしょうか。

ここまで手厳しく書くのは、手術の必要なしと判断したと言うことは
内科治療をするかそのまま経過観察として放置するかということですから
状態が悪化した時に「きちんと責任を取れるか」と言うことに繋がります。

状態が悪化してからの手術は、より難しい手術になりますし
死亡率も上がってきます。
重症例の手術は、その状態での手術経験のない獣医にはおそらく無理でしょうから
他院（大学病院など）へ紹介することになるんでしょう。

当院にもたまに他院から手術の依頼がありますが
こちらは開業医ですから緊急性があり、と判断されれば
例えば来院したその日にすることも可能です。
しかし大学病院の場合にはおそらく無理だと思いますが
どうなんでしょうね。
実際に東京の大学病院を受診した飼い主さんから聞いた話ですが
その症例の状態を相談された時に、私は緊急性があると判断したんですが
受診した大学では手術は数か月先でないと出来ないと言われたそうで
ただ飼い主さんが一生懸命そこで手術をして欲しいと頑張ったらしく
「緊急手術」と言う名目（という形式が必要らしいですが）で
すぐに入院手術となり無事に手術が出来たらしいです。

大きな病院ではチーム医療ですから一人の獣医の判断だけでは
結論が出せないんでしょうね。
ウチのように一人でやっている場合にはすぐに、と言うことが出来るんですけど。

胆嚢炎は悪化すると生命の危険にさらされます。
そこまでいかないうちに対処しなければならないわけですから
その見極めには経験が必要なんですが
その経験がない場合にはあまり無責任なことは言わない方が良いんじゃないでしょうか。
獣医が言う言葉には責任が生じますから。

明確な指針として定義されているわけではないんですが
獣医療域でも胆石症の治療は外科手術というのが一般的になってきています。
なぜならば、内科治療は全く効果がないことと
胆嚢破裂のリスクが高い疾患だからです。
このことは声を大にしておきたいところです。

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