院長 / つぶやき / 2022.2.21 22:23

Ｙｏｕ　Ｔｕｂｅを趣味で見ておりますが。

せんじつたまたま見つけた動画、これが犬の膀胱結石の手術でした。
人の手術動画もちょこちょこ見ているんですけど
膀胱結石の手術、多分アメリカの病院で行われたものだと思いますが
どうも釈然としませんでした。

手術手技もさることながら、手術中にへらへら笑いながら、それも結構な時間で
一見すると真面目にやってんの？と思うような感じでした。

少なくとも人の手術動画でこんな笑いながらと言うのは見たことがありません。
まあ、笑いながら（何がおかしいのかわかりませんけど）手術していても
手元がちゃんと動いてればそれでいいんでしょうけど
一般の人がそれをみてそこまで斟酌してくれるでしょうかね。
それにＹｏｕ　Ｔｕｂｅに動画を上げると言う時点で全世界に発信しているわけですから
せめて音声は切るかBGMにするかぐらいの配慮があってもいいんじゃないの、と思いましたね。

それと動画を見たものとしては最後の膀胱の縫合を載せて欲しかったですね。
膀胱を切開して中の結石を摘出するのは当たり前なんですが
手術後に再発や合併症のリスクを起こすのは縫合なんです。
どんな種類の縫合糸を使っているか、どんな風に縫合したのかがとても重要です。
仮にこの動画をみて勉強したいと思っている学生さんや手術経験のない、あるいは
少ない獣医師はそこを見たかったんではないかな、と思うんですよ。
動画を上げる側にはそこまでの考えはなかったのかもしれませんし
それはそれでいいっちゃいいんです。
ただ膀胱を切開して中から石を取り出す、それもケラケラ笑いながら
これをどんな気分で動画にあげようとしたのか、意図はわかりかねます。

膀胱の縫合については、過去に同級生と話をしたことがありまして
彼は見事に間違った縫合方法をしてました。
それを言うと「いや　これでいいんだ」と譲りませんでしたが
おそらくその症例はその後、再発に苦しんだことでしょう。
また、その後も同じ縫合方法を繰り返していたら
「あの病院で膀胱結石手術をすると治らない」ということを
言われるようになるかもしれません。

そんなことがあるのかい、と言われば当院で経験したことがあります。
過去に他院で膀胱結石の手術をしたことがあると言う犬で
膀胱結石が再発していました。
内科治療の反応が悪かったのでもう一度膀胱を切開して
中の結石を取ることになったんですが
手術をしてみてびっくりしたんですが
およそ考えられない部分を切開、縫合してあって
また縫合糸が残っていました（普通は吸収糸、つまり溶ける糸を使いますのでこんなことはあり得ません）。
前回手術してから1年以上が経過していましたので縫合糸が
吸収糸ではなかったこと、そしてその糸が膀胱粘膜を貫通していたこと
実は膀胱粘膜に糸が出るような方法は行ってはダメなんです。
先に書いた同級生もその方法でした。
つまり縫合糸が核となって結石を再度作ってしまっていたと言う事なんです。
かくして前回使用された糸を除去しなければならないわけですが
これまで先に書いたように切ってはいけない部分を切開してありましたので
糸の除去は困難を極めました。
それでも見える範囲のものはすべて取りましたが
果たして本当にすべて除去できたかどうかわかりません。

教科書には膀胱の切開部位、縫合糸の種類、縫合縫合など
きちんと書かれています。
その通りにすればいいだけの事なんですけど
手術事になるとどういうわけかオリジナルの方法になってしまうことが多々あります。
基本を身につけたうえでより良い方法としてのオリジナルならいいんですけど
基本を無視して、と言う事ならばそれは外科手術とは言えません。
それで上手くいったとしてもたまたまでしょうし
上手くいったと思っているのは本人だけかもしれません。

と言うことが過去に経験があるので今回の動画では
縫合のシーンを見てみたかったんです。

だってどう見ても不謹慎な手術動画でしたから
心配になってしまいますよ。

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