避妊・去勢手術に対する他院の対応です。
ここ数年ホントに多くなっているのは
「そちらではいつできますか」
「最短でいつできますか」
こういう問い合わせ電話がものすごく増えています。
その中で実際に当院来院された飼主さんに話を聞いてみると
「これまで行っていた病院では『予約で一杯だから3か月先になる:最近は5か月と言っているところもあります』と言われた」とのこと。
最初は「なんだそりゃ」と聞き流していましたが
ある時他県の方から
「手術を3か月先になるなどという獣医がいて(以下略)」
という話がありまして、どうやら私のいる地域だけのことではなさそうだな、と感じていました。
また「早く手術をした方がいい。でもうちでは予約がいっぱいで」と言われている人もいるようで
不安を煽っておいて知らん顔はないんじゃないの、と思うわけです。
100歩いや1万歩譲って、本当に予定がいっぱいだとしましょう。
ならば「うちでは予約で一杯なのでほかの病院でしてもらった方がいい」と一言添えれば済む話だと思うんですよ。
あるいは「ほかの病院を紹介しましょう」とかでもいいですね。
*ちょうどこの記事を書いている最中診察がありまして
もちろん初診で他院にかかっている方ですが
発情中の猫の避妊手術を依頼したところ
「年内は無理」と言われたそうですよ(笑)。
まあ、同じパターンの話が相次いで起こっているわけですが
こんなことでいいのかね、と思います。
数か月先になるからと言っている場合
ほぼ間違いないと思いますが、これは手術を断っていると思います。
なぜ断るのか、については本人の腹の中の事なので私にはわかりませんが
想像するだけなら
「手術に自信がない」または「過去のトラブルがあった:死亡したなど」
あるいは
「手術なんてリスクだけだし」と思っている、とか
「手術するの面倒」などなど。
以前腹部疾患のセミナーを東京で受講した際、実際の症例として
「膀胱結石」の犬の症例が上がっていました。
実際に手術をしたのは大学病院でしたが
開業医さんは自分のところではしないようで
何なら手前のところでするのは、避妊手術、去勢手術だけとしているようでした。
都会の場合、大学病院とか専門医とかたくさんありますでしょうから
わざわざ自分のところでしなくてもいいのかもしれません。
その代わりそういう施設を紹介するわけですから、これはこれで正解かもしれませんね。
しかし田舎ではそう簡単にはいきません。
大学病院といっても数が少ないですしそれに遠いです。
仕事を休んで1日かかって受診ってなことになります。
だから私は開業したときに思いました。
「自分のところでできることはやる」
「わざわざ遠くの病院に行かずともここでできるようになる」
「二次診療は無理でも1.5次診療ができるようになる」
などなど決意したものです。
確かに手術はリスクが大きいのです。
麻酔をかけるという行為、体に傷をつけるという行為
いずれも一つ間違うと命にかかわります。
そんなリスクを背負うのはヤダ、という気持ちは分かります。
そういう獣医はそれでいいと思います。
出来もしないことをするするなんてのはトラブルの元ですから。
(実際そういう獣医もいますよ)
それでも動物の病気を治したい、元気にさせたいという気持ちは持ち続けて欲しいわけで
正直な気持ちで飼主さんに対応してほしいわけです。
「うちでは手術はできません」と一言いうだけでいいんですよ。そして
「この手術ができるほかの病院を紹介します」と付け加えるとなおいいです。
それなのに胡麻化してやり過ごすのはダメですよ。
予約がいっぱいだ、と言われた飼主さんはその言葉をそのまま受け止めるでしょう。
まさかその言葉のが嘘だなんて思いもしないと思いますよ。
まあ、嘘か本当かはわかりませんけど。
ただ内科の知識や経験、外科の知識と経験を積んで
獣医師としてのレベルを上げること、これをし続けないといけないんです。
スキルを上げていき続けないといけないんです。
でもこれってどんな仕事でも同じでしょう。
いつまでも新人レベルで年だけ取ってもダメでしょうから。
ちなみ当院の手術は、水曜と金曜を手術日に設定していまして
次々と予約を入れます。
ただし原則として1日1件だけにしています。
ただその間に急を要するものが出てきますので
手術が2件になったり3件になったりすることもあります。
人それぞれでしょうが、それが私のやり方です。
婦長が心配するんですよ。
手術が2件ならまだしも3件になると
こっちがグタッとなっているんでしょうね。
まあ年も年ですから。
でも気力はまだ萎えていないんです。
技術もそこそこあるんです。
動けるうちに動いておかないと
もったいつけてる暇なんてないんですよ。
それはそれでいいんじゃないでしょうか。
偉そうに言っても私自身は普通の獣医師です。
特別な能力や天才的な技術があるわけじゃないんです。
リスクを抱えることは嫌ではないですが怖さは感じます。
出来もしないことをやるとは言わないです。
やれることをやる、っていうだけです。
他の獣医に、私と同じことをしろとは言いません。
人それぞれですから。
でもね、思いは同じであってほしいなと思うんです。
「君はなぜ 獣医師になろうと思ったの?」
これに対する答えが今の自分なの?ということですね。
| comments (0) |