肝臓移植のパイオニアです。
私の愛読書であり貴重な参考書である「メスよ輝け」という漫画にも出てきます
アメリカピッツバーグ大学のトーマス・スターツルと言う外科医です。
もちろん獣医師ではなく医師ですよ。
今日この方が亡くなられたというニュースを目にしました。
享年90歳とのこと。
1963年といいますから私が生まれる前年から肝臓移植の研究と実践に取り組んだとのことで
30代後半から行っていたということになりますね。
この研究があってこそ現在の移植医療が成り立っているというのは決して言い過ぎではないはずです。
ちなみに獣医領域で移植となると腎臓移植が可能ですが
肝臓移植も技術的には可能です。
これはスターツル先生が人への応用前にドッグラボと言うところで
犬を使って技術確立をされていますので。
技術的には可能であっても、道義的な面から実際に獣医領域で肝臓移植されることはないだろうと思います。
ただ、知識として特に肝臓外科に関しては、私にとってのバイブルは「メスよ輝け」です。
元々は小説を漫画化されたものでどちらも読みました。
特に漫画の方は丸暗記するほど読みました。
漫画の第一巻、第一話に「ウイルソン氏病」の患者が出てきます。
これは染色体異常で起こる疾患で、銅代謝不全が起こりついには肝硬変から肝不全となる疾患です。
根本治療としてはまさに肝臓移植です。
実はこの病気、犬でもあります。
有名なのはベトリントンテリアでドーベルマンなどでも報告があります。
残念ながら肝臓移植が出来ないので根治は出来ません。
上記犬種以外では非常に珍しい病気なので獣医師生涯の中でも1例診るかどうかというところです。
このウイルソン氏病の犬を診たときにこの漫画のエピソードがすぐに思い出されました。
臨床症状は人とは違うところが多いので、比較しながら経過を追っていました。
スターツル先生の記事には最大賛辞の言葉が並んでいました。
この人が巻いた種が世界中に広がって、現在は治療成績も非常に良好だと聞きます。
その現状を見ながら逝かれたのだろうと思いますがきっと安心されたことでしょう。
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