院長 / つぶやき / 2017.5.28 20:24

当院の患者さん以外の犬を診る唯一の機会ですので
色々と観察させてもらいます。

昔に比べると暴れる犬（人も？）が少なくなりました。
今回の参加ではほとんどいませんでしたね。
昔は会場のあちこちで鳴き声、罵声が飛び交ってましたけどね。
動物も含めて行儀がよくなったんでしょうね。

市街地以外の所ではよく見かけますが
今回はすべて市街地でしたが
病気の治療中、手術後の犬が来てまして
そのうち2頭は「注射不可」と言うことで中止しました。

予防接種は狂犬病予防に限らず「健康体であること」が前提です。
上記の治療中、術後は言うまでもなく妊娠中もダメですし
過去に注射によってアレルギーなどが出たことのある犬もダメです。
集合注射は屋外で行っていますので、何かあった時に対応が出来ませんから。

エリザベスカラーを装着したままの犬がいました。
どうしたんですか？と聞いてみると腫瘍の手術をしたばかりだとのこと。
内容はわかりませんが現在治療中ということでしたので
ここでは注射は出来ません、病院で相談してからにしましょ、とお話ししました。
こういう場合、当院であれば「治療が一段落してからにしますから」と先に説明しておきます。
手術と治療、それと予防接種は別物ですのでそれぞれの説明が必要です。
当院の患者さんはそのへん慣れたもので「これが治ってからでいいよね？」と言われます。

狂犬病ワクチンの副作用には「神経症状」があります。
これは狂犬病ウイルスが脳神経を傷害するものであることに由来します。
それゆえワクチンの能書に「癲癇など神経症状のあるものには使用しないこと」と書かれています。
今回脊髄障害の手術を受けてその後の回復が芳しくないという犬がいました。
こちらの飼い主さんから最初に現病気の話があったので良かったです。
注射の後に言われるとこちらも困りますから助かりました。

かつては「せっかくここに来たんだから打ってくれ」と言う人もいますけど
ダメなものはダメですのできっぱりとお断りします。
治療中であればかかっている病院で「予防接種猶予認定書」と言うのを発行してくれますので
それを役所に提出すればいいんです。
要は「無理にしてはならない」と言うことです。

年齢ではどうか？と言うことも聞かれます。
「もう年だからいいんじゃないの？」と言うことなんですが
年齢では、高齢だから接種しなくてもよい、とはなりません。

見るからに腫瘍をぶら下げている犬も何頭かいました。
当院であれば先に治療を勧めますので予防接種は後回しにしますけど
中には腫瘍があることに気付いていない人もいました。
それは気付いた段階で指摘して教えてあげます。
そして出来るなら病院で処置を受けるよう話をします。
腫瘍があることに気付いている人もいます。
聞いてみると病院には行ったことはあるらしいですが
良性だからと言われた、とのことですが
聞いてみると次第に大きくなっているとのことでしたし
実際に触診してみると良性のモノとは思えませんでした。
仮に良性であったとしても大きくなってくるものは
破裂する危険性があります。
幸い筋肉への固着はありませんでしたから
摘出するとなっても手術自体は簡単に出来るから、と説明しておきました。
どちらの病院に行かれるかはわかりませんが
早く治してあげたいと思いますね。

ここ数年、「大学病院で手術を受けた」と言う犬をちらほら見かけます。
飼い主さんからそういわれるのでどんな手術をしたんですか？と聞いてみると
先ほどの神経障害や胆嚢摘出もありました。
個人的な興味（！）として胆嚢の手術後の状態を聞いてみると
ずっと投薬中ということで、それはちょっとなぁと思いつつ
特にコメントは返しませんでしたけど。
もちろん投薬中であれば注射は出来ませんけど。

今年の集合注射で一番印象に残ったのは
腹部の腫瘍（おそらく乳腺腫瘍）の手術をした犬がきてまして
それ自体は珍しいことではないんですけど
車で高齢のご夫婦が会場に来られて
ちょうど暇だったので「次の人が来たんだね」と思いつつ
車の方を見てましたらハッチバックを開けたと思ったら
板を斜めにかけてスロープを作っておられました。
そこを犬が歩いて下りてきたわけです。
注射の後にそのことについてお聞きしたら
先ほどの手術の話になったんですが
術後に段差のあるところを歩かせたら
階段の門のところで縫合したところをこすったらしく
傷口がひどくなったからそれから気を付けているとのことでした。
ご主人がそのことをすごく気にして、それ以来バリアフリーを心掛けているらしいです。
大事にされている犬だねぇと思いました。

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