院長 / つぶやき / 2017.6.1 20:55

最近流行の薬です。

ノミ・ダニの駆除のほか、消化管内寄生虫もそしてフィラリアの予防も一度に出来ますよ、と言うものです。
これを便利とみるか無駄とみるか、と言うことなんですが・・・

ノミ・ダニとフィラリアは区別して考えるものだと思いますし
消化管内寄生虫までは行きすぎではないかと思います。

ノミ・ダニの予防は通年予防が理想的です。
つまり1年中行った方がいいです。
しかしフィラリア予防は予防期間内だけでいいんです。
それ以外は必要ありません。
まして消化管内寄生虫となると、全く不必要と私は思います。

それぞれについてもうちょっと掘り下げてみます。
ノミダニ駆除と予防に関しては通年実施が理想です。
しかし現実問題として1年中、つまり12か月ずっとやっている人がどれほどいるんでしょうか。
オールインワンの場合、1回ずつの処方ですから合計で１２回投与となります。
当院でメインで使っているのはボルホカラーと言う商品ですが
こちらは4か月持続性がありますので、通年となっても1年で3本消費です。
それでも1年ぶりに交換だ、と言う人も少なくありませんね。
またかかる費用の問題もあります。
ボルホカラーの場合、サイズがＳとＬの2種類ですけども、小型犬であればＳで中型犬以上はＬサイズですが
価格はＳが2000円弱、Ｌで2000円ちょっとです。
これを3本使用したとして年間にかかる費用は6000円前後となります。
オールインワンタイプのモノは使ってないので値段を知りませんが
ボルホカラーよりもかかるということはないでしょう。

フィラリア予防に関しては予防期間が6月から12月までです。
7か月間が予防期間となりますが
投薬で行う場合には体重によっても違いがありますが
年間にかかる費用は小型犬で10000円弱、中型犬で10000円ちょっとです。
これもオールインワンタイプであれば7回でいいわけですが
ノミ・ダニの事を考えて通年投与とすると5回分の無駄が生じます。

さて、消化管内寄生虫に関しては・・・
回虫・鞭虫・鉤虫あたりがメインに考えられていると思いますが
これらに感染している犬がどれほどいるでしょうか。
回虫の感染経路の多くは母子感染です。
また回虫の虫卵が含まれたものを口にして感染します。
鞭虫・鉤虫も基本的には回虫と同じ感染経路ですが
これらは繰り返し再感染するのが特徴でしょう。
特に鉤虫は体外に排出された虫卵が孵化して幼虫が皮膚から侵入するという
想像すると気持ちの悪い感染経路があります。
その特性から1度感染した犬は自分の糞便から排出した虫に再度感染するということが多々あります。
裏を返せばそんなに簡単に感染するものではないとも言えます。
消化管内寄生虫は感染を確認した時にだけ駆虫すればそれで事足りるはずです。
感染していない、する危険性がないのに駆虫薬を投与するというのは
いささかやりすぎじゃないのかなと思います。
と言う点で考えると寄生虫の駆除薬を「予防的に投与する」ことに関する費用は
やはり無駄ではないかと思います。
寄生虫に感染しているときに駆虫薬を投与するとすれば
その時にかかる費用は、駆虫薬投与を2回行ったとしてもせいぜい1000〜2000円ぐらいじゃないでしょうか。
ほとんどの犬は生涯感染しませんから、これにかけるオールインワンの費用は無駄と言ってもいいと思います。

いちいち考えるのは面倒だということであれば
オールインワンタイプは有用なものとなるでしょうし
その都度必要なことをすればいいと考えるならば
オールインワンタイプは無駄が多いとなるでしょう。

この薬は「予防医学」の１つです。
予防することの重要性を考えてみると
個人的意見としては「無駄なお金をかけずに必要最低限の費用で済ませる」と思ってますので
出来るだけ無駄なコストをかけるのは納得しかねます。
ノミダニについてもいろんな薬がありますが
飼い主さんが手軽に通年使用が出来るものを選んで勧めるべきですし
フィラリア予防も学術的に証明されている予防期間内だけ投与すればいいですし
消化管内寄生虫に関しては感染が認められた時にだけ駆虫すればいいんじゃないかなと思います。

消化管内寄生虫に関しては、ちなみに人の場合
小学校で実施されてきた「蟯虫検査」は中止となったことをご存知でしょうか。
その理由は「感染者が限りなく０になったから」です。
動物にも同じことが言えますね。
今時回虫感染している犬猫って珍しいですから。

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