院長 / つぶやき / 2017.8.29 21:05

器具の「完全消毒」です。

ここの所、歯科医療での器具についてのニュースがたびたび目に入ります。
記事を読んていると「おいおい・・・」ってなことが書かれています。

口腔内には細菌・涎があります。
歯の処置をすると出血もします。
そういう場所ですから使用する器具も
患者一人一人変えなければなりません。
当たり前です。
器具は洗うだけじゃダメです。
血液が付着した場合、それをそのまま違う患者に使えば
感染症をうつす可能性があります。

そこで行われる処置が「滅菌」です。
我々獣医師も手術器具は必ず滅菌します。
滅菌方法として一般的なのは
蒸気湿熱滅菌法でオートクレイブと言う機械に入れて行います。
これが完全滅菌法です。
あらゆる細菌、ウイルスなどを完全に死滅させます。

手技は簡単で器具を専用容器に入れてスイッチを入れるだけです。
オートクレイブをかけて取り出して使えるまで約40〜50分かかります。
ただ高温処理をするので50分ぐらいで取り出すと熱いです。
なので実際にはもうちょっと時間をおいて使うことになります。
この処理を行うにはオートクレイブの機械が必要ですが
卓上型と言う小型のモノであれば100万円もしません。
記事には100万円と書かれていましたが
コンパクトなものであればそんなに高いものじゃありません。
1回機械を使うのにかかる費用は・・・無料ですね。
手間も・・・かかりません。

ニュース記事によると、機械が100万円以上かかり
その他もろもろ（これが何だかわかりませんが）合わせるとざっと300万かかるとありました。
200万は何にかかるんでしょうね？さっぱりわかりませんが。
またオートクレイブを使うには人手が必要だ、とありました。
はぁ？　ですね。
機械に入れるだけですから子供でも出来ますよ。
人手なんざかかりません。

お金がかかる。
人手がかかる。
だから歯科医療では滅菌することがなかなかできない。

ふざけたことを言ってますね。
嘘ばっかりですよ。

動物病院ではオートクレイブ使わずに手術
つまり体内に器具を挿入するなんてことはありません。

ウチではオートクレーブが2台あり
熱処理が出来ない器具もありますのでそれためにガス滅菌器が1台あります。

水曜日が手術日なので複数の手術をすることがしばしばあります。
例えば手術が2件ある場合、オートクレイブ処置をした器具を使って手術をしますが
1件目の手術が終われば直ちに器具を洗い、超音波洗浄処理をしたのち
乾燥させてから再びオートクレイブ処置をします。
滅菌が終わるまでの間に休憩をします。
そして次の手術をします。

こんなの普通の事です。

仮に（１０００００００歩譲って）オートクレイブの機械を導入し
それらに300万円（絶対にない）かかったとしましょう。

たった300万円の必要設備投資が出来ないんですか？

これが正直な感想です。

ウチで使っている超音波検査機械はもっと高価です。
ウチで使っている超音波メス、シーリングシステムももっと高価です。
田舎の小さな動物病院でもそれぐらいの設備はあります。

保険に守られている人間の病院、歯科医院でたった300万円の設備投資が出来ませんか？
ＢＭＷやベンツにのる金はあってもオートクレイブの300万円が出せませんか？

そんなわけないでしょう。

歯科医療ではカートリッジ式の麻酔注射を使用しますが
これの使いまわしも問題になったことがありますね。
あの注射器も高価なんでしょうか？
使う量が少ないから一人の患者に使うとほとんどが残っちゃうんで

もったいないから

次の患者にも使ってたのがばれただけですよね。

ウチで胆嚢摘出手術の際に使用する止血用剤がありすが
1回の手術で使う量は微量ですので
袋から出したもの、ほとんどは廃棄します。
確かにもったいないですけど
次には

使えません

ので仕方ないですね。

結局はモラルの問題です。
金の問題ではないです。

もったいないから。
ばれなきゃいいから。

こういう気持ちがある限り
こんなくだらないことが陰では
延々と続くんでしょうね。

医師、歯科医師、獣医師はいずれも国家資格をもった専門家です。
何を持って専門家とするか、を今一度自分のハートに聞いてみた方がいいんじゃないですか？

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