院長 / つぶやき / 2017.8.31 18:27

これもニュースからですが

ある病院で原則使い捨ての整形外科器具を滅菌処理して再利用してしたことが報道されました。
これは先日の歯科医療の問題とは別次元のことになります。

歯科医療の方は
滅菌せずに器具を使用していた。
整形外科の方は
滅菌処理をして使用していた。

これは感染症リスクについて言えば雲泥の差です。

当院でも実際にやってますので告白しましょう。
例えば、気管チューブ。
これも袋には「１回使用」と書かれています。
しかし洗浄して滅菌処理をして再利用しています。
気管チューブの感染リスクは口腔内細菌、ウイルス感染などがあります。
もしも他の動物で使用したものをそのまま使用すれば
口腔内細菌の移植と言うことになります。
それは当然防がなければなりませんのでそのように処理をしています。

これは当院ではやっていませんが実際にしている病院があります。
手術器具のメスの刃です。
実際の手術ではメスを使うのは皮膚を切るときだけと言うのがほとんどです。
内臓をメスで切るというのはあまりありません。
だからでしょう、メスの刃を再使用するところもあります。

これはやってはダメだと思いますが、点滴の使い回し。
皮下補液の処置の際、１回に使用する量は
体格や状態によっても違いますが、大体100〜200ｍｌ程度です。
これを500ｍｌの点滴を使えば５〜２,３回使えます。
さすがに針は代えていると思いますが
点滴とそれに繋がるチューブはそのまま使いまわしています。

縫合用の糸も再使用することがあります。
大抵の縫合用の場合針と糸がくっついています。
筋肉や内臓を縫合する糸は滅菌処理をするとぼろぼろになるので使えなくなりますが
皮膚縫合に使うようなナイロン糸は滅菌することができます。
とは言えオートクレイブではなくガス滅菌処理になります。
ただ、現在当院では皮膚縫合でナイロン糸はほぼ使いませんので
無菌処置が必要ない処置で再使用しています。
皮膚縫合の場合には新品の縫合糸を使っています。

さすがに針は再利用しません。
これは今の注射針は使い捨てであることももちろんですが
１回皮膚に刺すとコーティングがはがれるので切れ味がガクンと落ちます。
それでも無理矢理刺せば入らなくはないんでしょうが
やられている方は痛くてたまらないでしょう。

滅菌処理を行っての再利用に関しては
おそらく全国どこの動物病院でも行われているんじゃないでしょうか。
皆がやっているからいいじゃん、と言うことではないです。
滅菌すればいいんでしょ、と言うことになりますかねぇ。
だから少なくとも再利用するのであれば
必ず滅菌処理をする必要があると思います。
それと厚労省や農水省などの役所の問題も少なからずあると思います。
ディスポ（使い捨て）としなければならないものと
そうでないものが現実にはあるわけで
鋼製のものはオートクレイブで滅菌処置が可能ですから
それを何度も使うということには許可をしてもいいんじゃないでしょうか。
そしてオートクレイブで滅菌できないものはガス滅菌処理をして使えば
微生物を感染させるリスクはないわけですから再使用してもいいんじゃないかなと思います。
現実にガス滅菌器と言うものが存在しているわけですし。

体内に使用するものに関しては
滅菌処理が必須であることは歴然たる事実です。
重要なのはここのところだと私は思います。

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