必ずしも薬が必要ではないんです。
他院からの転院で一番多いのが皮膚トラブルです。
敢えて皮膚病とは書きません。
「右のわき腹を?く」
これしか症状がない状態で、掻く=痒み と考えるのは
皮膚をよく診てから判断するべきなのです。
痒みがある場合、通常は患部が「赤くなる」か「腫れる」など
一見して異常所見があるはずで、これがない場合には
掻くという仕草は痒みではなく、痛みがある場合を考慮しなければなりません。
「足を噛む」そして「毛が抜ける」
これも同じことで噛むという仕草を痒みがあると考えると
間違えるかもしれません。
痒みは皮膚の症状でありいわば体の「表面」のことであり
その奥にトラブルがあれば痒みではなく痛みがあるという事になります。
「毛が抜ける」
これだけが稟告であった場合、すわ皮膚病か?と思い込むと
皮膚の状態、痒み仕草などをすっからかんと忘れて
抗生物質! ステロイド!となってしまうかもしれません。
ちょっと前にあった事例では
細菌感染症だという事で抗生物質を投与。
しかし改善がない、と言うと
カビかもしれないので抗真菌剤投与
でも治らない。
もしかしたら疥癬かもしれないので殺ダニ薬を投与。
もちろん治らない。
じゃあニキビダニだろうから殺ダニ剤の量をふやして投与。
全然治らない。
そして転院。
この間6か月でした。
治療内容を見れば、皮膚病の治療をすべてやりつくした感があります。
これで治らないんだから皮膚病じゃないんじゃないの、と思うのは
私だけではなく飼い主さんも思ったんじゃないでしょうか。
ただ、身体を掻く仕草はずっと続いていたようでしたが。
結局この症例は「痛み」でした。
痛みがある所を足で掻いていたわけです。
場所によっては口を持って行ってその場所を噛みますね。
これを見極めるのは簡単なんですよ。
その場所の皮膚が「赤くなっているか」を見ればすぐに、誰でもわかります。
掻いていたから痒い、と言い張るなら
「いや〜 参ったな」と言いつつ頭をぼりぼり掻いている人をみたら
『頭がかゆいのかな?』ってなるんですかね?ってことですが
これは痒くもなんともないですよね。
皮膚病と言う誤診、あえて誤診としときますが
次いで多いのは「アレルギー性皮膚炎」でしょう。
皮膚が赤い、痒みがある
これだけでアレルギーとは言えません。
血液検査で抗体検査をしたら陽性がでた。
だからアレルギーだ、と言うのも間違い。
アレルギー性皮膚炎の場合の皮膚症状は
非常に典型的なので一見すればわかるはずなんです。
もちろん原因物質まではわからないですよ。
ただ、全アレルギー性皮膚炎の中で
「食事性アレルギー」は一割もいませんから。
だからすぐに「処方食を与えましょう」というは間違いです。
アレルギー用処方食を与えるのは
それしか方法がない場合、と言うのが原則です。
当院では現在、食物アレルギーと診断して
それ用の処方食を与えているのはわずか数例だけです。
ただし症状が皮膚ではなく内臓に出ているので
症状を抑えないと健康管理が出来ません。
だから処方食を与えるようにして、その代り
『薬は与えていません』
ここ、重要なんですけどね。
皮膚トラブルは「皮膚病」と「皮膚炎」とに分けて考えるべきだと
個人的には思っています。
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